ベトナムの少数民族「カトゥー族」ツアーの、おもてなしレベルが高すぎる。
ベトナム

こんにちは!元ダナン在住者のユルワです。
ダナンは周辺に数多くの見どころがあって、決して退屈しない場所ですよね。美しい白浜のダナンのビーチはもちろんですが、色とりどりのランタンがロマンチックな世界遺産の古都ホイアンや、同じく世界遺産のミーソン遺跡、そして少し足を延ばして王宮があったフエへ行くのもいいですね。

「いや、そんなみんなが行くようなメジャーな観光地ではなく、穴場へ行ってみたい」

なんだかそんなこだわり派のトラベラーの声が聴こえてくるようです。
確かに「もっとベトナムのことを知りたい」とか「少数民族に触れる旅をしてみたい」と思う方もいらっしゃると思います。少数民族ツアーはベトナム北部山岳地方のサパなどが有名ですが、実は中部にも別の少数民族が住んでいて、事前に予約をすればダナンから彼らの村を訪れて、ただ写真を撮って終わるのではない、彼らと交流することができちゃうんです。

今回はダナンから車で2時間ほどの、ラオス国境近くの山間の村に住む「カトゥー族」のツアーをご紹介します。

カトゥー族について

カトゥー族の女性たち
カトゥー族はベトナム中部及びラオス南部の山岳地帯に暮らすモン・クメール語族で、独特な言語文化を持つ民族です。山で農業を、森で採集を行うという半自給自足の生活を現在でも続けています。

しかし、辺境に暮らす少数民族の多くが貧困の中で生活しているというのもベトナムが抱える現実の一つでもあります。ベトナム多数派民族・キン族の暮らしはここ数十年で発展し、都心部では中上級層を中心に暮らしが豊かになりつつありますが、キン族だけでなく、少数民族を含め農村の人々の貧しさはなかなか改善が難しいようです。

カトゥー族ツアーが始まったきっかけ

カトゥー族も例外ではなく、カトゥー族ツアーが始まったきっかけは、実は日本のNGO的公益財団法人FIDR(ファイダー)がカトゥー族が暮らす地帯の農村の生活向上支援に乗り出したことでした。

最初は農業関係の活動が中心だったそうですが、次第にカトゥー族の伝統を守りつつ、コミュニティー全体が豊かになることを目的として、村民一体で行う観光客向けの文化体験ツアーを始めることになりました。

現在は村民によるカトゥー観光協会がメインとなって、FIDRと共にたくさんのお客さんをカトゥー族の村でおもてなししています。ユルワがカトゥー族のツアーに参加した際に案内をしてくださったFIDRの方から聞いたツアーのコンセプトは、今までにないような素晴らしいものでした。

カトゥー族ツアーのコンテンツとは!?

「商才ある個人が儲けて、他は貧しいまま」という従来型の観光ビジネスではなく、コミュニティでお客さんをもてなすことで得られたお金を、コミュニティ全体が豊かになる形で還元していくこと。また、どんなに人気が高まっても自分たちのキャパオーバーになるとコミュニティのバランスを壊す恐れがあるから、あくまでできる範囲にこだわるというカトゥー族の姿勢に胸を打たれました。

そんなカトゥー族の精神性に貫かれたツアーはというと、これまた最強のコンテンツだったのです。

ウェルカムダンス

カトゥー族の出迎え
カトゥー族の村に降り立った私たちを迎えてくれたのは、紺地にビーズを織り込んだ民族衣装に身を包んだ若者たち。

伝統的高床式建物(グンハウス)の階段に私たちが座るのを合図に、若者たちのウェルカムダンスが始まりました。男女がそれぞれ円陣を組むフォーメーションの踊りは、女性が手のひらを太陽に向けることで祈りをささげ、その外側を男性が踊ることで女性を守る役割を果たすという意味があるそうです。炎天下汗だくになりながらも、ちょっと照れくさそうなカトゥー族の若者の表情がほほえましかったです。
カトゥー族ウェルカムダンス
ダンス後半には私たちゲストもカトゥー族の衣装を身につけ、一緒に踊ってみました。
最後に彼らの手作り品のプレゼントまでもらって「まだツアーは始まったばかりなのにこの充実感はなに!?」とびっくりしてしまいました。

ハーブガーデン

踊りの後は再び車中の人となり、別の村へ移動。
ハーブガーデン
次の村ではカトゥー族が大事にしてきた薬草を育てるハーブガーデンを見学し、伝統的な薬草文化を体験することができました。
カトゥー族が山で採取、栽培する生薬が都市部で高値となって取引されることもあるそうです。
シナモンの葉
ハーブガーデンでシナモンの葉を発見。嗅いでみると本当にシナモンの香りがしました。

カトゥーランチでおもてなし

ハーブガーデンの村を出るとそろそろお腹の虫が鳴る時間です。またまた車に乗って今度は食事を提供してくれる村へ急ぎます。
案内役のカトゥー族の女の子たちとすっかり打ち解けて、一緒に歌を歌ったりして楽しいひと時を過ごしました。
カトゥー族ランチ
高床式の家屋に入るとそこにはおいしそうなお料理が所狭しと並んでいるではありませんか!
普段は粗食のカトゥー族がこれだけ豪華なお料理を作ってくれるのですから、カトゥー族ツアーのおもてなしのレベルの高さを感じましたね。

ベトナム料理とはまた違った優しい味付けが、どこか日本のお婆ちゃんのお料理のような味わいで思わずお腹いっぱいいただいてしまいました。個人的には自家製の塩山椒に茹でたキャッサバをつけていただくのがヒットでした。

カトゥー伝統織物

お腹いっぱいになった私たちが最後に訪れたのが、伝統織物の村でした。
元々私は布が好きで、色々な民族の布を集めているのでカトゥー族の織物にも興味津々だったのです。
カトゥー族の織物工房
村の工房では女性たちが布を織る姿がまず目に入りました。私たちが連想する機織りではなく、腰機織といって、腰にバンドを当てて固定させ、全身を使って織り紡いでいく非常に原始的な手法が印象的。
実際に体験させてもらったのですが、なかなかむずかしいんですよ、これ!
カトゥー族腰機
カトゥー族織物
1段1段糸を織り紡ぎ、その間にビーズを1つずつ織り込んで伝統モチーフをかたどっていくという、非常に気の遠くなるような作業から生み出されるカトゥー族の布。
ただお店で既製品を見るだけでは知り得なかった手仕事の世界を垣間見られたことは非常に大きな喜びでした。

カトゥー族ツアー体験で考える……

貧困から脱し、豊かさのために変わらなければならないこともあるでしょう。しかし、その変化の中でも守るべきものを守り続けることも大切だと思います。

カトゥー族の村を訪れた数時間に私は多くのことを教わった気がします。カトゥー族のツアーは単に少数民族の文化体験だけではなく、一つの民族が持つ価値観、そして彼らが直面する現実問題などにも触れることができるので、非常に勉強になりました。帰国した今でもカトゥー族ツアーのことは、自分自身の中にしっかり残っていてダナンを訪れる人に強く推してます。

まとめ

最後になぜ私がカトゥー族ツアーを推すのかまとめてみました。

1.単なる観光ではなく、家族のようにおもてなしを受けることでカトゥー族の文化や生活習慣、そして価値観を学べるスタツア的なコンテンツ満載
2.観光収入を特定の個人が独占するのではなく、コミュニティ全体で分配されることによって地域の貧困改善につながっている
3.完全予約制の入村制限により、コミュニティ内のバランスをキープして伝統を守ることができている

そんなわけでカトゥー族ツアーはダナンへお越しになるどの旅行者の方々にもおススメですが、とりわけこんな方には強くおススメします!
・少数民族に触れる旅がしたい
・国際交流や社会貢献の現場に興味がある
・ダナンで他の観光客がやっていないことを経験したい

この記事を書いた人

ユルワ

ユルワベトナム/ダナン専門家

「女一人でどこへでも乗り込む」アラフォーのトラベルライター。主にベトナムの中で大人気のダナンを掘り下げて情報発信しております。 幼少のころから東京都内を転々とし、更に家族と札幌へ移住。そんな生い立ちからついたノマド癖。 モノはないけど海が超絶きれいな太平洋上の島国と激安激ウマのベトナム・ダナンで通算3年間に及ぶ海外暮らし経験有。次はどこで暮らそうかなと思案中です。

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