アルバニアの今。鎖国・無神国家を経て、独特すぎる文化の国になっていた!
アルバニア

albania

「実は以前、基本的に人付き合いをせず、いつでも人と戦えるよう何十年も体中鍛えていました。
ねずみ講にはまって自己破産ギリギリの状態にもなりました。
でも今はおかげさまでそういう状態から抜け出して、一軒家なのでくつろげますし、おいしい食事も飲み物もあります。庭も緑豊かで海も目の前にあるのでぜひ一度、遊びにいらっしゃいませんか」
もしこんな書き込みを出会い系サイトで見つけたら、怪しさしか感じないですよね。
しかし、それを地でいってしまっている「国家」が存在するのですから、まだまだ世界は旅してまわる価値があります。
泣く子も黙るその国の名は、「アルバニア共和国」。

アルバニア共和国とはいったいどんな国?

アルバニアはこちらです。
そうなんです。ギリシャとイタリアのお隣さん。

アドリア海の海岸線もしっかり有しています。
逆になぜ今までその存在に気が付かなかったのか。狐につままれたような気分になった方も多いかもしれません。
albanian flag
怖い国旗として評判のアルバニアの国旗

共産主義国家だった

ピラミッド
共産主義国家時代の独裁者・エンヴェル・ホッジャ博物館だった建物。現在は落書きだらけの子供の遊び場となっている。

アルバニアは第二次世界大戦が終わったあたりからゴリゴリの共産主義国家になり、西側諸国(日本も含む。といっても、もともとそんなに交流はなかった)はもちろん、ユーゴスラビア、ソ連、中国といった社会主義、共産主義国とも価値観の違いから次々と距離を置くようになりました。
つまり鎖国です(1991年まで)。

イタリアっぽい?

鎖国の間、国民にとって自分と世界をつなぐ唯一の窓口はイタリアからのラジオ電波。それを拾い世界の情勢を確認していました。
なので、アルバニアではイタリア語の普及率がとんでもなく高いです。
それだけでなく、町を歩けばピザ屋に当たり、エスプレッソばかり飲んでいて、古着はイタリア製。生活の隅々にまでイタリアが染みわたっています。

入り混じる宗教

アルバニアは、「ヨーロッパ唯一のイスラム国家」です。
しかし蓋を開けてみれば、イスラム教(70%)、カトリック(10%)、東方正教(20%)が入り混じっています。また共産主義時代に「無神国家」政策(国民はどの宗教も信仰してはいけない)が推し進められたため、宗教の自由が認められている現在でも、人々の宗教に対する意識は緩いのが実情。
例えば、アルバニアではクリスマスも復活祭も断食明けも等しく盛大にお祝いします。
このあたりは、「季節感」としてハロウィンもクリスマスも正月も楽しむ私たち日本人の感覚と似ています(さすがにイスラム教徒が教会で結婚式を挙げるということはありませんが)。
サンタ
土産物屋の様子。中央上には独裁者だったエンヴェル・ホッジャの顔写真入りマグカップが。
クリスマスマーケット
首都ティラナのクリスマスマーケットの様子。遠くにクリスマスツリーも見える。
korca
もちろんお酒もしこたま飲みます。こちらはアルバニアで一番人気のコルチャビール。
500mlが1杯200レク(≒200円/2016年6月現在)くらい。堂々とモスクの絵が描いてあるパッケージもあります。

そんなアルバニアには何があるの

アルバニアにも、世界遺産、ビーチ、山、伝統料理に伝統音楽といったものがちゃんとあります。
ただ、こんなガイドブック的観光スポットをいくら並べてみたところで、アルバニアという国の正体を表せないのも事実。
どの国でもそうですが、アルバニアにもまた”アルバニアだからこそ”存在しているものがいくつもあります。
それらの集積がアルバニアなのか、そのひとつひとつがすでにアルバニアなのか。その判断はみなさんにお任せすることにして、ここではそのアルバニア的な事象をいくつかご紹介したいと思います。

ティラナのカラフルな建物

ティラナの建物
アルバニア共和国の首都「ティラナ」の市長は元建築家。共産主義時代の暗い街並みを変えるため、それらの建物をカラフルにペイントした。
市民の意見は賛否両論。

国内に75万個あると言われるバンカー(トーチカ)

バンカー
鎖国時代、ソ連を仮想敵国として、いつ攻められても対応できるように国中にこのようなバンカーを作りまくった。
2~3人は入ることができ、コンクリート製で頑丈すぎて壊すのが大変なので、そのままボコボコ放置されている。
バンカーのほか、当時は国民全員に行きわたる量の銃器を保有していたとの情報も。

Kolonat (コロナット)

kolonat
アルバニアのファーストフードチェーン店、Kolonat。包み紙にプリントされている黄色い文字は「M」ではなく「K」。
ハンバーガーの他、ピザ、スブラキもあり、メニューはバラエティに富む。だいたいセットで400円くらいするので、アルバニアではプチ高級品扱い。

Kolonatのホームページ(英語とアルバニア語)
上では「K」ロゴがどこにも見当たりません。

視界に男しかいない

ティラナ
これはアルバニアに限った現象ではないが、白昼堂々おじさんが集まって、何かをしていたりしていなかったりするのをよく見かける。何かをしている場合はチェス。
互いの距離が近くスキンシップが盛んなのも特徴で、欧米ならレインボーカラーの人々のようなその振る舞いも、ここでは誇り高きアルバニア人男性の基本的な態度。
市民デモのニュース映像では、画面いっぱいに何十人もの男がパンパンに映っている状態がお茶の間に届けられる。

高級車、高級車、高級車

ベンツ
ドイツで盗まれたベンツの9割はアルバニアにある、と言われているほど(中古の)メルセデスベンツばかり。
その他アウディ、BMWなどの高級車もたくさん。そのおかげで洗車屋商売が大繁盛している(機械で洗うのではなく人が洗う)。

アルバニアンウォーク

walk2
両手をジーンズのポケットに入れて歩くスタイル。目の前からくる男子集団の全員がこの歩き方、ということも珍しくない。
アルバニア国外でアルバニア人を探すときの指標となるほど、確立されたウォーキングスタイル。

双頭の鷲ポーズ

IMG_4200
アルバニア民族を表すポーズ。
外国人がアルバニア人と写真を撮る時、必ずと言っていいほどこのポーズの指南を受ける。そしてさせられる。

孤高の存在、その「よくわからない」という魅力

メンタリティの面ではどこにも属さない(属せない)孤高の存在として、「ヨーロッパ最後の秘境」の名を欲しいままにしている。それがアルバニアという国です。
世界の文化が徐々に均一化する中で、よそ者がみて「よくわからない」ものがある国は貴重なのではないでしょうか。
予測できない彼らのやり方に遭遇した時ほど、「アルバニアに来ちゃったな~」と感じる瞬間はありません。
人が旅に出る理由はさまざまですが、もしこういう感覚にピンときたら、ぜひアルバニアを訪れてみてはいかがでしょう。
安全で割安で冒険的。怪しいことなんて何ひとつありませんよ。

他のアルバニアの記事はこちら。

アルバニア共和国基本情報
通貨 レク(Lek) 1レク=1円
言語 アルバニア語
時差 日本より7時間遅い
空港 マザーテレサ国際空港(日本からの直行便はなし)
人口 約300万人
首都 ティラナ(人口約42万人)
有名なアルバニア人 マザー・テレサ(!)、リタ・オラ(Pop歌手)、ジョン・セナ(ハリウッド俳優)、イスマイル・カダレ(作家)、
得意なスポーツ 近年はサッカーを頑張っている
地域区分 旧ユーゴスラビアではなく、現EU圏でもない
治安 かなり良い
日本人はビザ不要 国境でアルバニア共和国の出入国スタンプを押してくれない。理由は不明(インクの節約か?)
アルバニアのねずみ講についてはこちらに簡単に説明があります 1997年アルバニア暴動
アルバニア語 ありがとう(Faleminderit ファレミンデリト)

この記事を書いた人

y s

y sコソボ定点観察人

バルカン半島好きが高じて2015年夏よりコソボを拠点に生活中。でも実際はラブ&ヘイト。過去6年間で中央アジア、ロシア、キューバ、イスラエル、バルト三国などにも訪問。ステイタスは I'm busy with being lazy。 コソボ(とバルカン半島)の魅力の啓蒙!なんて大義名分を掲げた結果、ただの個人趣味全開になったウェブサイト・「ほんとうは楽しいコソボ」をひっそりと展開中。

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