フィレンツェ、ウッフィツィ美術館にレオナルド・ダ・ヴィンチ絵画作品は計3点あるのですが、そのうちの1枚「東方三博士の礼拝」は5年以上も修復で見ることが出来ませんでした。
その修復を終えて、3月末より9月24日まで1階で特別展示されています。早速見てきました。
3枚揃うのは5年ぶり!
フィレンツェのウッフィツィ美術館のレオナルド絵画作品は、東京で2007年に特別展が開かれたことのある「受胎告知」、師匠であるヴェロッキオと描いた「キリストの洗礼」そして、今回大規模修復が行われた「東方三博士の礼拝」です。
セピア色の作品の理由とは?
「東方三博士の礼拝」は、レオナルドが1481年か82年頃に、サン・ドナート・ア・スコペート修道院の為に描いたものとされています。
「東方三博士の礼拝」は1400年代の宗教画の主題の中で最も人気の高かったものの1つで、多くの芸術家が描いています。1月6日のフィレンツェのお祭りにもなっています。宗教画の内容はお祭りの内容を書いたこちらを読んで下さい。
当時、修道院からはレオナルドに30ヶ月以内で完成するよう委任されていました。しかし、時を同じくしてレオナルドはミラノの君主ルドヴィコ・スフォルツァへ自分のPRを書いた推薦状を送っていました。
しばらくして推薦状を受理されたレオナルドはミラノへ旅立つ事になり、セピア色の下書きのまま永遠に放置されることになってしまったのです。
同時代のヴェネツィア派のティツィアーノが色と面で絵画を構成したのと比べて、フィレンツェの芸術家は、対象物を見て多くのデッサンや下書きをします。
絵画を描く場合も下書きを茶色等で単色で描き、その上から色を重ねて仕上げます。上記の下書きでは、背景の階段も逆にかけられています。
この絵のために描いた有名な下書き。コンピューターもなかった時代に、1点透視図法で描かれた緻密で正確なもので、この部分が背景に使われています。
レオナルドは色々な点で同時代の芸術家より40年位先を進んでいたと言われていますが、その技術は卓越しています。
根気のいる修復士の仕事の様子も見れます
オピフィチオ・ピエトレ・ドゥーレ(フィレンツェ芸術修復所)で5年の歳月をかけて、大規模な洗浄修復が行われました。
1年がかりの修復の為の科学的な器具等を使った準備研究を経て、修復のプロ達が5名のチームで挑んだ修復の模様は特別展の映像で見ることが出来ます。以下は映像からの写真です。
薄い水色の光、登場人物達顔の純白さ、マリアの背景の木の色などの大幅な色の違いが分かるように比較してあります。(画面右が修復後)明るい部分がより明るくなったことがわかります。
背面で絵画を支えていた4箇所部分の裂け目も合わせて修復されました。修復前の絵画の複製パネルも展示してあります。
時空を超えた科学捜査官!?
今回の修復では、カラビニエリ(憲兵とよばれる警察軍のひとつ)による調査も行われました。まるで殺人現場の鑑識のようですね。
なんと! 鑑識(?)の見つけたのは、多くのレオナルドのものと思われる指紋や手のひらの跡だったそうです!
そして、背景の右上からは小さな象が発見されました! この可愛らしい象は、実際の絵画でも目を凝らせば肉眼で見ることが出来ます。
1482年、描きかけのままレオナルドがミラノに行ってしまった後、フィリッピーノ・リッピ(サンドロ・ボッティチェッリの弟子、フィリッポ・リッピの息子)に託されます。
リッピは1496年同じ主題で同じ大きさの作品を描いています。こちらの作品もウッフィツィ美術館蔵で通常は別の部屋に置かれていますが、今回の特別展では比較できるよう一緒に展示されています。
9月24日までの特別展示を終えたあとは、2階の新たな部屋にレオナルド作品計3点が置かれる予定となっています。夏休みにイタリアに来られる方は見逃すことが出来ない1枚になりそうですね!