マルセイユでサッカー観戦!OM酒井選手の活躍と爆竹がなる独特の雰囲気を楽しむ。
フランス

“SAKAI~!Sushi, c’est BO~N!Allez~!”(サカイー~!スシ、オイシイ~!行け~!)
……って、フランスのサッカー・スタジアムでティーン達が叫んでたら、どう思います?
実は私は、酒井選手をからかってるのかと思っちゃったんです。知っている子達だったので、「ちょっと、言葉に気をつけなさいよ!私、日本人なの忘れた?」
振り向いた1人が、「あ!そうだった。え?じゃあ、Allez~!って日本語でなんていうのか教えて。聞こえるように応援したいんだよ!」

そう、大きな誤解!でした。彼らは、酒井選手を彼の母国語で応援したい、その方が耳に届きやすいと、知ってる単語を並べただけなんです。スシ、って。

2017年の欧州スポーツ首都マルセイユ。

欧州では、毎年持ち回りで様々な街が首都を務めるんですが、2013年の欧州文化首都はマルセイユとプロヴァンス地方。お陰で、ずいぶん道路や街並みは整備され、美術館・博物館がリニューアルされたり、新たにオープンしました。
そして、今年2017年はスポーツ首都を務めるマルセイユ。昨年末のフィギュア決勝もそのひとつとして招致されたし、14日の開会イヴェントでは、旧市街から港に滑り降りる氷の滑走スペースが特設されました。
4月のラグビーの大きな大会をはじめ、様々なスポーツイヴェントで活気溢れる1年になりそうです。
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そんなマルセイユといえば、サッカー!……そして、スタジアムに響き渡るSAKAI~!の声。

多くのマルセイユっ子にとって、1番身近で大きな存在なサッカー。自分ではしないけれど、観るのは大好きという人もずいぶんいます。もちろん応援するのは、地元サッカーチームOM(オランピック・ド・マルセイユ)。同じ南仏近郊からもずいぶん駆けつけてくるし、相手チーム次第では乱闘にもなるので、たとえば天敵(らしい)パリ・サンジェルマンとの試合の日には、朝から、ヘリコプターが市内上空を旋回しています。

我が家の車も、引越してきた最初の頃にはパリナンバーのままだったので、試合の日に路上駐車(は有料ですがOKなので)していて、窓ガラスを割られたこと3回。以来、試合の日には車で出掛けるのはやめました。スタジアムの近くに駐めていて、燃やされてしまったパリナンバー車を見たこともあるんですが、初めてではないようです。

そんな生半可ではない世界で活躍しているのが、酒井宏樹選手。

ワールドカップが日本でも開催されて、欧州のチームへの移籍選手もずいぶん増えている一方で、結果を出せてないままだったり、お客様扱いでしかないように見えることも少なくないのに、こんなに違和感なくピッチで声援を受けている選手は、インテルの長友選手ぐらいかと思っていました。日本人という枠を外して、OMの外国人選手として捉えても、異例のひとりのはず。
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とにかく、入場前に、スタジアム上方のモニターで選手紹介される瞬間から、他の選手と同じかそれ以上の声量で、「SAKAI~!」の大合唱。試合中も、ボールをとっていてもまだとっていなくても、「SAKAI~!」。そして、冒頭に書いた 「スシはオイシイ!」の絶叫に。
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せっかく訊かれたので、「《行け~!》って言うのよ」と答えたら、満面の笑顔。「”IKE~!”?、カンタンじゃん。おい、IKE~!って言うんだって!」で、「SAKAI,IKE~!」の連呼、大合唱へ……残念ながら、酒井選手には届きませんでしたけど、今日あたり学校で皆で教えあってくれてると嬉しいですね。それぞれ、住む界隈も学校も違うので。

実は、彼らは息子と同じU15のチームメイトたち。コーチの計らいで、保護者数人も含めたレギュラー総勢20人で観戦に。5歳の時から一緒にやってる子でさえ、私が日本人なこと、息子がハーフなことなんて、すっかり脳みそのどこかに入り込んで忘れられてしまっていたようです。確かに、学校のクラスが一緒だったりすると、そうした話題になることもあるものの、サッカー仲間にとっては、出自なんてどうでもいい事。あうんの呼吸という表現はないものの、タクティックという言葉があります。

酒井選手の動きや、合図の出し合い、相手チームに吹っ飛ばされて転んでも、2秒後には何もなかったように続けている姿は、”OMの選手”でした。

そういえば、インスタグラムにチームメイトのFlorian Thauvin(フロリアン・トーヴァン)選手が載せた写真で、恒例のクリスマス前にOMの選手たちが、小児病棟の子どもたちを訪ねて励ましたときのものがあるんですが、そこでの笑顔もとても自然で、素敵なんですよ。ね?


残念ながら、試合結果は、相手チーム・モナコの勝利。最後までグランドに残って客席に手を振るのを繰返した数人の選手の中で、両サイドのヴィラージュと呼ばれるサポーター達でびっしりになるカーブ部分に、さりげなく、でも深く頭を下げる酒井選手は、世界のどこで暮していてもSamouraï Bleuでした。

さて、スタジアムの行き方と入場時の注意あれこれ。

そんなマルセイユのスタジアム。昨年10月にリニューアルされて、スポンサーの名前がついた現在の名称は、Orange Vélodrome(オランジュ・ヴェロドローム)。
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座席のゾーンによって、入場口が2つに分かれるのでご留意を! なんと、最寄り駅がそれぞれ別なので、2つあります。チケットにJean bouin(ジャン・ブアン)と入っていたら、メトロ2号線のRond Poind du Prado駅で降りて、正面入り口(写真・この上)から。Ganay(ギャネイ)となっていたら、その1つ先・終点のSt.Marguerite駅で(写真・この下)。
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セキュリティチェックは、合計3回。
まずは、スタジアムの柵の内側に入るために。次は、入場口に近づく前に、もう1ヶ所。両手を挙げて、上着は開いて内側を見せます。間違っても内ポケットに手を入れたりはしないでくださいね。危険な誤解の元になりますから。すーっと上着の止め具を外したら、両側に開くだけ、です。
そして、最後にチケットを自分で改札の機械にかざして脇を通りぬけたら、全身、足の先までボディチェック。
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私は、最初の2回は係官が男性だったので、ノーチェック。スタジアム内に入るときだけ、女性係官と。試合開始は21時、折りしも寒波の欧州。気温は0度近くてものすごく厚着していたので、大笑いしながら和やかに、でも、数分間じっくりと、でした。
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何しろ、とにかく男の世界。1,000人に1人も女性観客はいないので。試合中に爆竹がなって煙が上がったり、欧州のサッカー場ならではの、独特の雰囲気です。そこで、ごくごく自然体で活躍する日本選手。(もしかしたら、)聞こえてくる「IKE~!」の声援。
スポーツ首都年は今年限り、酒井選手は(今のところ、もともとは)1年の契約期間だから、残りあと半年。来マルセイユ&スタジアム観戦は、どうぞ、ぜひお早めに!

この記事を書いた人

ボッティ喜美子

ボッティ喜美子仏日通訳翻訳・ジャーナリスト

フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮らした後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ、家庭優先で仕事しています。Framatech社主催の仏ビジネスマン対象のセミナー『日本人と仕事をするには?』講師は10年目(年2回)。英語・スペイン語も少々。

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