横浜・三渓園。
大都市に残された、日本の粋を感じることができます。
Footbridge in Sankei-en Gardens, Yokohama, Japan / Mustang Joe
Sankei-en Gardens, Yokohama, Japan / Mustang Joe
中でも「三渓記念館」は一見の価値あり。
三渓園スタッフより、その魅力をご寄稿いただきました。
庭園のなかで美術鑑賞
■今回の旅の達人 清水 緑 大学で日本美術史を専攻し、米沢市上杉博物館で学芸員生活をスタート。 三溪園に勤務し、丸10年。 |
前2回に引き続き、今回が最後の三溪園の紹介です。
(前2回はこちら:
【三溪園】京都よりも京都らしい。横浜にのこされた日本庭園で愉しむ、風流の一夜。 – tripro VOICE
今年も開催!三溪園で味わう園芸文化の粋「菊花展」 – tripro VOICE)
今回は、三溪園内にある美術館について紹介します。
広い園内の中ほどに、「三溪記念館」という美術館があります。
園の創設者・原三溪(はらさんけい 1868~1939)の実績を紹介するとともに、
三溪自筆の書画や、ゆかりの画家の作品などを月替わりで展示しています。
小茂田青樹(おもだせいじゅ)《薊図》(あざみず) 三溪園蔵。
青樹は三溪が支援した画家の一人。三溪の旧蔵品。
このように、かつての三溪園には多くの美術品と画家たちが集ったのでした。
現在、その美術品の多くは東京国立博物館をはじめ各地におさめられ、
国宝や重要文化財に指定されているものも少なくありません。
また、三溪自身、若いころから書画をたしなみ、特に1923年におこった関東大震災以後、
横浜の実業家として復興のために尽力し作家支援や美術品収集を控えてから、筆を執ることが多くなりました。
その作品は、人々の暮らしのひとこまや身近な動物をあたたかに描き出し、
みていると思わず微笑みたくなるようなものばかりです。
原三溪《兎図》 三溪園蔵。白く柔らかな毛に包まれた兎と、きれいに咲いた月見草。
三溪記念館では、そうした所蔵品を、季節やイベントにあわせたテーマを設けて展示していますが、
今年の秋は4年ぶり(編集部注:2013年時点)に特別展を行います。
三溪が支援した作家のひとり、明治末期から大正はじめにかけて活躍し、
惜しくも早世した今村紫紅(いまむらしこう 1880~1916)の日本画展です。
紫紅という画家は、「千紫万紅」をあらわしたその名のとおり色使いがすばらしい作品を多くのこしました。
そして、当時は多くの画家をひきつける魅力をもった兄貴分のような存在で、
新しい日本画を切り開こうとさまざまな挑戦をした人です。
「今村紫紅展―横浜のいろ」は、
三溪がかつて所蔵していた紫紅の作品とともに、初期のころから晩年までの作品を紹介します。
今村紫紅《枇杷ニ鷽/びわにうそ》 横浜美術館蔵
※このコンテンツは、tripro「旅の達人」を再編集したものです。