フィレンツェのメディチ家と言えば、世界中で知られているミケランジェロやボッティチェリなどルネッサンスの巨匠のパトロンです。市内に残る宮殿以外でも、多くの別荘を所有しており、2013年には12のメディチ家別荘と2つの庭が世界遺産として登録されています。今回はフィレンツェ市内からバスで気軽に行けるペトライア別荘を紹介します。
世界遺産のヴィッラ(別荘)って?
ヴィッラとは、古代ローマ時代に起源を持つ、都市中心部から離れた郊外に建つ独立した一軒家を指します。その多くは、広大な敷地に庭や池や畑だけでなく森もありました。現在のカントリーハウスのようなイメージです。ルネッサンス時代、市民は城壁に囲まれた都市中心部の集合住宅に住んでいました。郊外に独立した庭を持った一軒家が、いかにステイタスであったことがわかります。
メディチ家別荘とその庭園の数は、トスカーナ州に登記されているだけで36件といわれています。現在、その半数以上が個人所有となっており、結婚式の披露宴やイベント会場として使われているところもあります。こうした別荘の中から厳選された「メディチ家12の別荘と2つの庭」が世界遺産に登録されています。
バスで気軽に小旅行
バスチケットは、90分以内で乗り換え可能なチケットが1.2ユーロです。往復分2枚買っておきましょう。若干お得な4回分チケットもあります。バスに乗る前に、新聞などを売っているキオスクや立ち飲み珈琲店バール、タバッキで売っています。買ったチケットは、バスに乗ったらタイムカードのような機械がありますので時間と日にちを刻印します。日本と比べて検札なくバスに乗れるので、キセルをする旅行者がいますが、検札の人が乗ってくると罰金が課せられます。地元の人は定期券を所有していたり、乗り換える前のバスで既に刻印している場合が多いです。必ずチケットを購入して下さい。
フィレンツェ中央駅から市内アタフ社バス2番 カレンザーノ(calenzano)行き、もしくは28番セスト・フィオレンティーノ−ヴォルパイア(Sesto Fiorentino – Volpaia)行きに乗ります。バスの本数は10分毎にあります。中央駅バス停留所は、周辺工事等で位置が変わる場合もありますので、実際に行って聞いて下さい。駅からわずか7.5キロなのですが近年、路面電車の工事をやっていますのでバスでも45分程度かかります。
停留所(fermata)のセステーゼ トレ(Sestese 03)で降ります。写真はグーグルビューの停留所付近です。そこから住宅街を移動します。collodi通り、reginaldo giuliani通り、via della petraia通りを歩いて15分、若干の坂道を上がって行きます。時々villa pietraiaと書かれている方向を示す小さな看板が立っています。お帰りの際は、バス到着時に降りた真向かいにある進行方向がフィレンツェ方向のバスに乗って下さいね。
時代と共に変わるヴィッラの当主達
さて、入り口に入ってみるとお庭が現れます。ヴィッラ自体が丘の上に建っているので、ヴィッラを囲む庭は傾斜がついています。
1544年、メディチ家の当主コジモ1世が購入し、その息子フェルディナンド1世が引き継ぎます。1600年代には中庭部分にヴォルテッラーノによって「メディチ家の栄華」が描かれ、まさにヴィッラに華を添えています。メディチ家最後の当主、アンナマリア・ルイーザが1743年にいなくなってしまった後、フィレンツェはロレーヌ家の支配下におかれました。イタリア統一の後、フィレンツェがイタリアの首都になった1865−70年までイタリア国王ヴィットリオ・エマヌエーレ2世とその妻ローザ・ヴェルチェッラーナの愛した場所になりました。この時代、カーペットやタピストリーなどのインテリアがイタリア中から運ばれたそうです。1984年より博物館となっています。
豪華なインテリアのヴィッラ見学が無料!
ヴィッラの中は公開されていて、入場無料です。他の博物館のように各部屋に監視人がいませんので、係の人が30分ごと(季節と時間について詳しくは公式サイトを確認して下さい)にやってきて集まった人まとめて案内してくれます。見学所要時間は30分前後です。
中に入ると美しい中庭に圧倒されます。1872年にこの別荘でとり行われたヴィットリオ・エマヌエーレの息子の結婚式に合わせて、大きなシャンデリア付きのアーケードの屋根が作られました。ここは舞踏会の部屋だったのですね。周りはヴォルテッラーノの豪華なメディチ家の栄光を辿る壁画があり、1600年代までの実在したメディチ家の当主達が登場しています。中庭は、よく見ると鹿の頭部で飾られています。狩りを愛したヴィットリオ・エマヌエーレ2世が仕留めたものと言われています。
ローマのカンピドリオの丘でのネムール公ジュリアーノ・ディ・メディチ(中央青マント)とウルビーノ公ロレンツォ・ディ・メディチ(中央赤マント)。メディチ家当主達の中では、この二人はあまり有名ではありませんが、サン・ロレンツォ教会のメディチ家礼拝堂にミケランジェロが二人のお墓を作って名前を残しました。二人の背景、トライヤヌス帝の円柱の向こうにサン・ピエトロ寺院のドームも見えます。この時代まだドームは完成されていなかったため、フィレンツェ大聖堂のクーポラ風になっています。右のバルコニーの間からは犬も覗いています。すべての絵にだまし絵のような階段やバルコニーが描かれていて、鑑賞している人を引込む役目をしています。
公式のお部屋として使われた、タピストリーの間(赤の間)。当時の華やかさが想像できます。
ローザ・ヴェルチェッラーナの部屋に飾ってある写真。国王の背が低かったので、少しローザのほうがしゃがんでいるのだそうです。
1800年代中頃にロレーナ家によって作られた遊戯室。当時のビリヤード台は長いのが流行りだったそうです。セレブ達は現在とあまり変わらない遊びをしていたことがわかります。
2階窓から見える、フィレンツェの風景。中央の小さな建物は、散歩の最中の休憩場所として使われました。右奥には大聖堂のクーポラが小さく見えています。このヴィッラの後ろには狩に使われた広大な森が広がっています。
Via della Petraia 40, Località Castello, 50141 Firenze
電話番号 055 452691
別荘の庭に無料トイレがあります。
近辺にバールはありませんが、水などが買える自動販売機が別荘内にあります。