日本一お酒好きな都道府県と言われる鹿児島県! その鹿児島県一の繁華街・天文館の怪しげなビルに「軍国酒場」という酒場があるのをご存知でしょうか? そのものものしい店名から受けるイメージを裏切らない、とにかくすごい店らしいという噂をかねがね聞いていたので、今回実際に潜入してきました!
「軍国酒場」が入ってるビルってどんなところ?!
鹿児島初日、様子見もかねて昼間に軍国酒場の入っているビルを訪ねてみると、どう見ても廃墟ビル。同じビルにカラオケや漫画喫茶もあったようですが、今では軍国酒場以外のお店は閉業しているそうです。
この日の夜にもう一度行ってみると、軍国酒場は閉まっている様子。隣のバーに入ってお店の方に軍国酒場について聞いてみたところ、「最近はコンスタントに営業しているわけではないが、軍歌が流れている日は営業しているらしいよ!」と教えてくれたので、次の日にもう一度行ってみました。
いざ、出撃!
2日目の夜! 一応、事前に電話したところ営業しているとのことだったので、再び向かってみると、本当に軍歌が大音量で流れている!
階段および踊り場にはほとんどライトがなく、4階にある軍国酒場にたどり着くまでとても不安でした。
本当に暗いし、書いてある言葉は怖いし、流れてる音楽は軍歌だしということでめちゃくちゃ怖かったです。4階以外はほぼ廃墟です。
入り口があった!!!!
ついに4階に……! 小さな入り口がありました。
このような注意書きがされています! 酩酊状態では行かないようにお気をつけて!
この細い道を通って店内に入ります。入り口から所狭しと貼られ並べられている写真や戦争関連の物品に圧倒されます。
ついに着席! 私と友人以外に、先に常連の熟年男性、大学生風のカップルがいて、後から働き盛りといった感じのサラリーマンの方もひとりでいらっしゃいました。
カウンターに座ると軍服を着たマスターが。マスターはこの道51年の大ベテラン、横道さん。少し前までは奥様もお店に立たれていたそうですが、年齢のこともあり、今はご主人おひとりで出られているそうです。
「魚雷(ビール)」・「爆弾(焼酎)」・「中国(ウーロン茶)」
ドリンクは「魚雷(ビール)」・「爆弾(焼酎)」・「中国(ウーロン茶)」の3種類のみ。この日の「配給」はカンパンと金平糖と落花生のみ(「手榴弾」と呼ばれるゆで卵があることもあるらしい)。
強制的にこの中から選ぶしかないので、本当に「ぜいたくは敵」の世界です。ちなみに後ろの大学生カップルのテーブルにあった「中国」は2リットルペットボトルで置かれていました。
私と友人はせっかく鹿児島だから、と迷わず爆弾(焼酎)を注文しました。店内のBGMももちろん軍歌。
カウンター以外にもお座敷があります。以外と狭苦しくなく、くつろげる(?)店内です。
実はすべてが本物! マスターが集めた品々
所狭しと並べられている戦争関連の品々は圧巻。実はこれらは実際に使われていた軍服や武器だそうで、マスターが戦後鹿児島中を巡って集めた本物なんだそうです。
「ここまで集めるのは本当に大変だったよ」と熱く語ってくださったのですが、鹿児島弁慣れしていない私はところどころ聴き取れず、鹿児島出身の友人に通訳してもらいながらお話ししていました!
本物の三八式歩兵銃は生まれて初めて見ました。
ひとくせあるネーミングセンス
座席名に数字なんてものは使いません。「満州方面」「ラバール」「サイパン」「北支方面」。おかしい……。
軍国酒場の醍醐味! 軍歌しかないカラオケ
日本広しといえども、ここだけなのでは? と思ってしまうぐらい珍しい、軍歌オンリーカラオケ。
お客さんは古びた歌詞ブックから曲を選び、マスターが1曲1曲リクエストにお応えして、懐かしのレーザーディスクで流してくれます。そこで驚いたのは、後ろにいた若いカップルが交互に軍歌を歌い始めたこと……!!! めちゃくちゃ最高のカップルじゃないか、と感動してしまいました。
今回この歌詞ブックの中で、何曲か知っている曲があったのですが、マスターと常連さんに何か歌いなさい! と言われたので「めんこい仔馬」を入れてみました。私が自信がなさげにしているとカップルの女の子の方が代わりに全部歌ってくれて(しかもうまい)よかったです。少し悲しいけどとてもいい曲です。
創業51年! 老舗酒場を始めたきっかけとは
だんだん打ち解けてくると、奥から何やら新聞のようなものを出してきてくれました。この新聞記事は、横道さんがお店を始めた51年前にインタビューされた時のものだそうです。この中には、なぜこのようなコレクションをしているのか、そしてなぜこのような酒場を開くに至ったかについての横道さんの回答が書かれています。
「単に珍しくて集つめたものではありません、現在の日本の発展興隆を考えると戦陣に果てた戦友達の犠牲の上にこそ今日があるのだと思って、遺品の一片づつでも収集展示し少しでも多くの人に見て貰えばそれだけでも明日の日本の私達の心の糧になると考えて居ります。(原文ママ)」
マスターの横道さんは、思想がどうとかいうのでなく、本当にただ戦友達の犠牲の上に自分たちがいるということを忘れずに、みんなで良い日本にしていこうという気持ちでいらっしゃるんだろうな、というのが話していてひしひしと伝わってきました。
私も好奇心から訪問してみましたが、最初こそ圧倒されたものの、実際にはただの色物酒場では全くなかったですし、すごく興味深く楽しい時間を過ごすことができました。
体力的な問題で、年内いっぱいの営業は頑張りたい、とのことでしたが、できれば無くなってほしくないなと心から思いました。
ちなみに、どこにも料金が書いていないので会計の仕方は不明ですが、焼酎のお湯割をカップで3回ほどお代わりして、ひとり2,000円ずつでした。安いのか高いのか謎です。
年内で見納めかも?! 最後にぜひ行ってみて
少しでも興味があったら、絶対にすぐにでも行くべきですよ! とってもおすすめのお店でした。