横浜の片隅にポツンと浮かぶ人工島に、子供から大人まで幅広い世代に人気の水族館と遊園地の複合施設「八景島シーパラダイス」があります。こちらの複合施設では季節ごとにイベントが催され、様々な料金プランが用意されているため、通年大勢の人で賑わいます。
数年前から米国を中心にエンターテイメントに焦点を当てた水族館を批判する動物愛護活動家たちの運動が激化していますが、個人的には共感できる部分もあれば、そうじゃないところもあります。水族館の存在意義とこれからについて考えるべく、あえてエンターテイメント色の強い日本最大級の水族館「八景島シーパラダイス」へ行ってきました。
はじめに
私は海洋生物学者でもなければ海獣のトレーナーでも獣医でもありません。大学で海洋生物に関しての専門的な知識を学んだわけでもなく、その分野に関しては素人と言えます。それでも海洋生物を愛する気持ちはそれを専門職にしている人たちに引けを取らないと確信しています。
これから私がここに記すことは、人よりもちょっと海洋生物に詳しい海洋哺乳類好きの一個人としての主観的な意見です。そのことを念頭に入れてから、この記事を読み進めていただけると幸いです。
まずはチケットをゲットしよう
まずはアクアミュージアムの入り口横にある自動券売機か窓口でチケットを購入しましょう(写真は夕方頃に撮ったものですが、この日実際チケットを購入したのはお昼過ぎでした)。
チケットの種類がいくつかありましたが、私はアトラクションチケットは必要ないので水族館4施設パス(アクアミュージアム、ドルフィンファンタジー、ふれあいラグーン、うみファーム)を購入。
うみファームへは時間がなくて行けませんでしたが、「育てる」「獲る」「食べる」を通じて自然の海と触れ合える場所ということで、興味深いです。ちなみに夕方からのお得なチケットもあります。
八景島にいる動物たち
アクアミュージアムにいる動物たち
写真では紹介しきれないぐらい、「八景島シーパラダイス」には色んな種類の海洋生物がいます。その数なんと500種類10万点。他の水族館ではあまり飼育されていない、珍しい海洋生物も展示されています。
昨年の10月に残念ながら死亡してしまいましたが、以前はジンベイザメ(現生最大級の魚類)が飼育されていました。写真は模型です。
ドルフィンファンタジーのイルカたち
なぜ私がここを度々訪れるかというと、大好きなイルカ(海獣全般大好きですが……)の飼育数がとても多いからです。
動くスピードがあまりにも早く写真で捉えることができませんでしたが、今はイロワケイルカ(別名 パンダイルカ)がいます。見た目はこのイラスト通りです。白と黒のコントラストが非常に美しい、小型のイルカです。現在日本でイロワケイルカの展示が行われているのはここの他に、宮城の「仙台うみの杜水族館」と三重の「鳥羽水族館」だけです。
ところでみなさんは、これらの動物たちのバックグラウンドについて考えてみたことがありますか?
とても不思議だなと思うのは、私たち日本人は海に囲まれた島国で暮らしていながらも、海の世界で起こっている出来事や生物のことを、あまりにも知らなすぎるということです。
新鮮な海産物は私たちの食生活のクオリティを維持するためには欠かせないものであり、日本人は日々海の恩恵を受けて生きています。それだけではなく日本には野生のイルカやクジラが暮らす地域もありますから、本来なら海洋生物は日本人にとってもっと身近な存在なはずです。
ですが現実は海洋生物に関しての文献や動画を検索しても圧倒的に英語のものが多く、水族館での教育システムも米国のそれとは大きく異なります。つまり私たち日本人は限られた少ない情報の中でしか、海の世界について学ぶことができないのです。
しかし水族館は日本人に大人気のテーマパークです。デートスポットや癒しのスポットとして水族館を紹介する記事や番組を良くみかけますが、確かにその要素はあったとしても、みんな心のどこかで未知なる海洋生物への憧れの気持ちがあるのではないかと思います。
見て触れて海洋生物をもっと身近に感じてみよう!
「ふれあいラグーン」では様々な動物たちと触れ合うことができます。私は幸運にもコビレゴンドウ(クジラ類)とオタリアに触れ合う機会に恵まれました。どちらもトレーナーさんとの息はぴったり。
人間は触れ合うことによってその動物たちへの愛着が湧き関心が一層強くなります。その動物たちへの小さな興味はやがて、その動物たちを守りたいという大きな気持ちに変わるかも知れません。私がそうでした。
ここでの時間は海洋生物に関して無知な日本人にとって、忘れがたい貴重な経験になること間違いなしでしょう。ちなみにこちらの「ふれあいラグーン」では、別途料金で「シロイルカのおでこにタッチ」や「イルカとあくしゅ」などの企画もやっているようですが、先着順とのこと。
感動のシナリオで綴られた夜のイルカショーは必見
アクアミュージアムの4階に位置するアクアスタジアムでは、ダイナミックな海の動物たちのショーが繰り広げられています。こちらのスタジアムの規模はかなり大き目ですが、良い席を狙いたい方は30分ぐらい前に到着していた方がいいでしょう。スタジアムは外ですが座席には暖房機能が付いており、これがかなり温かいので寒い日でも安心です。
ショーが始まり、まず登場したのはベルーガでした。この日私が見たショーは「楽園のナイトアクアリウム」(2/28まで好評開催中)というイベントの一環でやっている「海の動物たちのショー~絆~」でした。昼間のショーは見逃してしまったのですが、次回は是非そちらの方もチェックしたいところです。
「八景島シーパラダイス」のショーはかなり完成度が高めなのでいつも度肝を抜かれてしまうのですが、もちろん今回も例に漏れずでした。
ステージのスクリーンに映し出されたのは、ある少年とイルカとの絆を描いた感動的なストーリーでした。バックミュージックは全米ヒットチャートの数々。
残念ながらイルカたちのダイナミックなジャンプの様子を上手に写真に収めることはできませんでしたが、沢山のイルカたちがベルーガの友達のイルカたちという設定で大活躍していました。
ベルーガはしっとりとした雰囲気のときに登場します。写真は少年が大人になり恋人を連れて海に出かけると、長い間会っていなかったイルカもパートナーを連れて待っていたというシーンです。優美に泳ぐベルーガの優雅なパフォーマンスを見ていると、涙がポロリとこぼれてきます。
世界中にこんなに美しい動物が存在していて、その動物を間近で観賞することができるということに大きなありがたみを感じながらも、同時にこれでいいのかな?という疑問が生じます。
水族館からイルカやシャチが消える?!
現在世界では約2,000頭のイルカ・クジラ類が飼育下に置かれています。日本の和歌山県太地町で行われているイルカの追い込み漁を描いた「The COVE」(2009年公開)や米国シーワールドのシャチがシニアトレーナーを殺した事故について言及し、エンターテイメント産業の一環として海洋哺乳類を利用しているシーワールドに意義を唱えた「Blackfish」(2013年公開)などのドキュメンタリー映画が公開されたことにより、冒頭でも書いたようにシーワールド批判の声が高まっています。
これを受け、米国シーワールドは次々と水族館でのシャチの繁殖やショーを廃止することを発表。カリフォルニア州では、2016年にシャチの飼育下での繁殖を禁止しました。動物の倫理的な扱いを求める人々の会(PETA)は飼育下にあるシャチやイルカをすぐに海に返すよう要求しているということですが、なんとも無責任な話だなというのが私の意見です。
長い間飼育下にいたイルカたちが野生に戻るのはあまりにもリスクが高い上に、例えば仮に野生に戻れたとしても、イルカたちの生活が脅かされないわけではありません。ホエールウォッチングのエンジン音が野生に暮らすイルカたちに大きなストレスを与えていることや、人間が海に捨てたゴミをお腹いっぱい食べたイルカやクジラの命が沢山奪われていることを忘れてはなりません。
水族館からイルカたちを解放するだけではなんの解決にもならない気がするのです。確かにイルカのような美しい海洋哺乳類が水族館の狭い水槽の中を泳ぎ回っている姿を見ていると胸が痛くなります。人間のエゴでやらされているショーを見ているときも複雑な気持ちになります。それでも私は海洋哺乳類のいる水族館が必要だと考えています。イルカショーもしかりです。
「八景島シーパラダイス」のイルカショーは米国のエキサイティングなイルカショーに匹敵するぐらいの迫力があると思いますが、このイルカショーから多くのことを学ぶことができます。知られざるイルカの生態や頭の良さ、身体能力の高さはショーの要所要所に垣間見ることができます。また、人間とイルカとの交流を目の当たりにすることにより、その動物に親近感を覚えます。
日本だって蚊帳の外ではないのですから、私たちは今世界の海や水族館で起こっていることから目を背けず、イルカたちのために何ができるのか考える必要があります。きっと正解なんてないのだと思いますが、「八景島シーパラダイス」のような大規模な水族館が海洋哺乳類をあまり身近に感じていない日本人に、海洋哺乳類の未来について考えるきっかけを与えてくれるのではないかと信じています。
アドレス 〒236-0006 神奈川県横浜市金沢区八景島
アクセス 海沿いの景色がきれいな「シーサイドライン」の八景島駅が最寄り駅となります。
「シーサイドライン」への接続駅は、京浜急行線「金沢八景駅」とJR根岸線「新杉田駅」です。
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