台湾にはかつて、「日據時代(にっきょじだい)」と呼ばれる、日本政府に統治された時代(1895~1945年)がありました。
台湾には今でも、その当時に日本政府の機関が建設した建物がいくつも残されています。台湾南部の都市、嘉義(ジャーイー)にある「獄政博物館(嘉義舊監獄)」(舊は旧という字の繁体字です)もまた、その時代に建設された建物の1つ。
獄政、というと何のことかちょっと分かりづらいですが、「獄」は「監獄」の獄を指しています。つまり、日本統治下に日本政府が建設した監獄を、古跡として見学できる観光スポットなのです。
少し古い時代の監獄と聞いて、何だかおどろおどろしい場所を想像してしまう方もいるかもしれませんが(私自身が世界の監獄に明るくないというのもありますが……)、嘉義にあるこの監獄については、そのイメージは全く当てはまりません。
そもそもなぜこの監獄を見学に訪れたかというと、嘉義に住んでいる知り合いの方に、観光スポットとしてオススメしていただいたからなのです。その際、もっとも印象深かったその方のお言葉が「あの監獄、住んでみたい」というものでした。
……住みたい監獄、ですと……!?
そんな言葉に興味を惹かれない筈もなく、嘉義での観光ポイントとして真っ先に訪れた次第でありました。
1.どうやって見学できるの?
獄政博物館を見学できる時間は、毎週火曜日から日曜日、1日に4回と決められています。見学できる時間は9:30、10:30、13:30、14:30で、各回ともボランティアガイドさんについて施設内を見学できる形となります。この時間以外での見学は受け付けてもらえませんので、時間を見計らって訪れるようにしてくださいね。入館は無料、中での飲食は禁止です。
私は2回ほど訪れたことがありますが、1度目は平日に訪れたため、観光客は10人ほどでした。その上ガイドさんが少し日本語が喋れる方だったというのもあり、時折日本語も交えて説明をしていただくことができました。本当にありがたい限りです。
2度目は連休の真っ只中に訪れたため、100人以上の方がこの施設を見学に来られていました。この場合はもちろん(ガイドの方が日本語を喋れる喋れないに関わらず)、ガイドの方は中国語で施設の説明をする形となります。ゆっくり落ちついて見て回れるということもあるので、できたら平日に観光に訪れるのがいいかなと思います。
2.博物館内には何があるの?
「台灣嘉義監獄」と書かれた白い門をくぐると、そこから見学スタート。見学者の人数によりますが、少ない場合は典獄長の部屋の観覧からスタートとなります。椅子にかかっている典獄長の上着を着て写真を撮ることもできますよ。
反対側の総務課と書かれた部屋には、歴史紹介などの資料が展示されています。
▲まずは中央台
嘉義舊監獄の作りは、アメリカのペンシルベニア州にある「イースタン州立刑務所」、日本の北海道にある「網走刑務所(博物館網走監獄)」などと同じく、中央台から放射線状に舎房が伸びる形をしています。イースタン州立刑務所や網走刑務所は舎房が5本ある五翼放射状舎房ですが、嘉義舊監獄は三翼のみ。
正面と左右にそれぞれ舎房への入り口が見えます。
この中央台には日本統治時代や国民党時代に着用されていた制服の展示、また刑具などが展示されていますが、もう一つ特徴的なのが、中央台に入って振り向いた上の部分に、小さな窓のようなものがあるということ。実はこれ、神棚なんです。
まさかここで神棚をみることができるとは、と大変驚きました。
▲受刑者が入る舎房の中
白い壁に、木製の扉がはまっています。また天井部分も同じように木で作られています。この天井は網目状に作られており、上を通れるようになっています。この道は「猫道」と言われ、看守がここを通って下の舎房を確認できるようになっているのです。
ちなみにこの施設、建物の至る所に、木材としてヒノキが使われています。また南国の湿気の多い場所であることに配慮して通気性にも優れた形をしているので、舎房の中はひんやりと心地の良い空気が漂っているのです。1度目に訪れたのが8月の真夏の最中だったのですが、なるほど確かに、これは住みたい……。
この嘉義舊監獄、「衛生科」という建物内には、病室や歯の治療室などもあります。受刑者の健康にも色々な配慮がされていたわけですね。
▲受刑者が働く工場
このほか、施設内では受刑者らの働いていた工場の見学などもできます。第一工場から第四工場までがありますが、各工場内では受刑者の方が作成された作品の展示や、かつて使用されていた器具の展示などがあります。
ここの工場内も夏でも涼しくて居心地が良いです。
婦育館と呼ばれる建物は、女性の受刑者のための舎房です。ここでは、3歳以下の子供をつれて入居することができました。
奥にあるのは子供を寝かすための揺りかご。かつての風景をなんとなくうかがい知ることができますね。