一定の時間しか入れない幻の温泉が東京に!「地鉈温泉」は谷底の秘湯だった
日本

1日に1~2回しか入るタイミングがない幻の温泉。温泉を囲う岩場を境に広がる大海。まるで海のど真ん中で浸かっているのを味わえる温泉が、東京の島で味わうことができるのをご存知だろうか。
人口600人の小さな東京の島・式根島は温泉パラダイス。その中である一定の時間しか入れない、V字谷の底にある温泉・地鉈(じなた)温泉を体験してみた。

断崖絶壁を通り抜けた先にある地鉈温泉

”海が見える温泉”というカテゴリーは、式根島に来なくとも、多く存在するであろう。しかしここの温泉はひと味もふた味も違う。
式根島の地鉈温泉は、いわゆる海中温泉。源泉が湧き出しているこの地鉈温泉では、1日に入れるタイミングがなんと1~2回しかない幻の温泉なのだ。
 
その日、筆者は式根島にひとりで泊まりにきたのだが、宿で仲良くなった旅行客のカップルにばったり駐車場で出くわし、一緒に地鉈温泉に行ってみることにした。
式根島は小さな島で、多くの人が車を借りない。ただアップダウンは激しいため、電動自転車を借りたり、運動好きな人は歩いたりする。歩いて散策も楽しい、小さな自然に溢れた島なのだ。
 
筆者は地鉈温泉の駐車場に車を停め、カップルとともに階段をずんずんと降りていった。最初は景色を楽しむわけでもなく、特にものすごい長い階段でもないのに、「最後にはこれを上らなきゃならないんだな~……」と、都会慣れしてしまった筆者はそう思いながら、ゆっくりと階段を降りていった。
しかし、そのまま階段を降りると、一気に視界が広がり、V字谷が目の前に。
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こんな小さな島に、こんなに素晴らしく、広い光景が目の前に広がることに驚きを隠せず、ついつい「わぁ!」と声を出してしまった。
岩の壁の向こうに広がる海を目指し、我々は階段を下り、その岩の壁を通り、地鉈温泉にたどり着いた。
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目的地にたどり着くと、いくつかの場所から湯気が立ち込めた。赤茶色のお湯は東京の島の中では珍しく、式根島特有だ。「内科の湯」と呼ばれる地鉈温泉は、神経痛や冷え性、関節症、婦人病などにもいいらしい。
そんな赤茶色の温泉の先には、青い壮大な海が広がっている。海水と混ざり、80度ほどの温泉が適温になっていく。筆者はここには脱衣所がないと聞いていたので、予め洋服の下に水着を着ておき、ベストな温度の場所を探し始めた。

今回入った場所は、海が一番近いスポットだった。温度も42~43度ほどでちょうどいい。そのまま地面に座ってしまうと、赤茶色が水着に着くので、お尻を浮かせながらゆっくりとお湯の中に入った。
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驚くほど海が近い、というより、自分が入っていた温かな温泉の場所のすぐ隣は冷たい海水だった。そのま真っ直ぐと広がる海の絶景は、リアルに手に届く近さで、海の広さを海と同じ目線で見ることができ、まるで筆者は海の中にぽつんと温泉に浸かっているのではないか、と感じるほどの絶景だった。

1日に2回しか入れない温泉ってどういうこと?

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なぜこんなに素晴らしい温泉に、1日に1~2回しか入れないのか。それはこの地鉈温泉は源泉に海水が混ざり適温にさせるので、満潮の1時間~1時間半前後のタイミングがベストだとされているからだ。
元々の源泉は80度。そんな中へ入ったらやけどしてしまうので、是非やめてほしい。海水が混ざる満潮からちょっと時間がたった時が、良い湯加減だということは、そういうことなのだ。

地鉈温泉に入るタイミングを知るには

では、いつが満潮なのか。日によってもちろん時間は変わるが、式根島観光協会またはお泊りの宿が、だいたいどのくらいに地鉈温泉にいくのがベストなのかを教えてくれる。いきなり地鉈温泉に向かうよりも、事前に確認することが確実だ。

式根島・地鉈温泉までのアクセス

式根島 泊海岸
コバルトブルーの海が印象的な式根島は、東京の浜松町から東海汽船の高速船で約3時間、大型船で約9時間で到着する。夏は高速船が毎日出るが、冬は定期的にしかでないため、基本的には大型船を使用することになる。
式根島 中の浦海水浴場
9時間も? と思うかもしれないが、行きは夜中便なので仕事終わりに船に飛び乗り朝には到着し、その日は目一杯遊べる。帰りは日中に出るが夜の8時前には東京に到着するため、新幹線で帰らなければならない! なんて人も新幹線に間に合うことが多いので安心。
東京の小さな温泉天国・式根島で、週末、日々の疲れを癒やしに温泉旅はいかがだろうか。自然の力で生まれた温泉と、目の前に広がる絶景が、冬の強張った体を癒やしてくれるであろう。

地鉈温泉
住所:新島村式根島1006
入浴料:無料
公式HPはこちら

この記事を書いた人

Fujico

Fujicoフリーライター/地域観光プロモーター

2015年に独立。主にフリーライターとして活動している。専門としては、トラベルや観光地域プロモーション。そして英日の翻訳・通訳も行っている。独立前は畑違いの販売業で、店舗マネージャーを務め、大阪で日々汗を流していた。 広く色々な場所にいくよりも、一つの場所を開拓するのが好きな性分で、今は月1以上のペースで東京の離島・伊豆諸島に通っている。趣味は「観光客がいない素晴らしい場所を見つけ出し、それを紹介して喜んでもらうこと。そしてその後どや顔する」ことである。音楽と英語をこよなく愛す、目指せボーダーレス女子。

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