「ダリ展」は10年ぶりの大回顧展!曖昧で強烈なダリの世界とは?
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【芸術の秋】10年ぶりの大回顧展!曖昧で強烈なダリの世界へ

食欲、スポーツ、読書……。暦でいうと「◯◯の秋」と言われる季節がやってきましたね。今回はそのひとつ「芸術の秋」にちなんで、国立新美術館で開催されている【ダリ展】へ足を運んでみました。
自他共に認める天才、奇天烈と評されるダリの世界とはいったい……?

スペイン・アメリカが全面協力!日本では過去最大規模の展示に

ダリ展
20世紀を代表する画家たちのなかでも、ずば抜けて知名度と人気があるダリ。今展示は、ガラ=サルバドール・ダリ財団(フィゲラス)、ダリ美術館(フロリダ州セント・ピーターズバーグ)、国立ソフィア王妃芸術センター(マドリッド)の世界的なダリ・コレクションが一堂に会する初めての機会だそう! 約250点の作品と共に、初期から晩年までの創作活動をたっぷりと楽しめる内容になっています。
会場は8つに分けて構成されており、年代を追って展示されていました。

(1)初期作品(1904〜1922)
(2)モダニズムの探求(1922〜1929)
(3)シュールレアリスム時代(1929〜1938)
(3)ミューズとしてのガラ
(5)アメリカへの亡命(1939〜1948)
(6)ダリ的世界の拡張
(7)原子力時代の芸術(1945〜1950)
(8)ポルト・リガトへの帰還-晩年の作品(1960s〜1980)

革新的なダリ、表面的には反動的なダリ、科学に情熱を傾けるダリ、美術史の批判的な観察者としてのダリ。これだけ様々なダリの顔に出会える機会はそうありません。

ダリの世界は謎の世界。その先に見えるものは現実?夢想?

【芸術の秋】10年ぶりの大回顧展!曖昧で強烈なダリの世界へ
スタッフの方に確認したところ撮影はNGとのことでしたので、私が個人的に気になった作品を図録で振り返っていきたいと思います。
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「キュビスム風の自画像」(1923)
こちらは、雑誌などを通してピカソやブラックのキュビスム(立体派)に触れ、それを自らの作品に取り入れたもの。これは印刷なのでわかりませんが、実物を観ると、バルセロナの新聞「ラ・プブリシタ」など印刷物の断片が各所に貼り付けられており、ピカソらが行ったコラージュを実践しているのがわかります。
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「カダケス」(1923)
「カダケス」は、フランス国境近くのピレネー山脈のふもとにあるアンポルダと呼ばれる地域の海辺の町。この地域の風景は、生涯を通してダリに多大な影響を与え、インスピレーションの源となったそう。先ほどとは異なる、柔らかで透明感のある色味にとても惹かれました。
【芸術の秋】10年ぶりの大回顧展!曖昧で強烈なダリの世界へ
【芸術の秋】10年ぶりの大回顧展!曖昧で強烈なダリの世界へ
「謎めいた要素のある風景」(1934)
続いては、ダリ展図録(¥2,900)の表紙にもなっているこちらの作品。下の方に小さく描かれているセーラー服を着た少年はダリ自身なんだとか。教会、塔、壁、糸杉、強い光を放つ空……。これらの”謎めいた要素”の前に絵を描いているのは、17世紀のオランダ・デルフトの画家フェルメール。ダリがフェルメールをどれだけ尊敬していたかは、「アトリエで仕事をするフェルメールを見ることができるのなら、この右腕を切り落としてもいい」という有名な言葉に表現されていますね。
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「雲の中の戦い(立体鏡絵画) 」(1979)
こちらは、立体視という技術に関心を抱いている時代に描いたもの。立体鏡という特殊な装置を用いて見ると、3次元の空間が現れる仕掛けになっているそう。実際に立体鏡を体験できるわけではないですが、ここは想像力をぐっと働かせて、ダリが誘う世界へと冒険にいきましょう! タイトルの「雲の中の戦い」にもヒントが隠されているかもしれません。この作品からも、晩年のダリは新たな芸術のアイデアを最新の科学や技術に見出そうとしたことが読み取れます。
その他にも、まるでタイルのように見えてしまうもの(「アス・リャネーの浴女たち」)、注文された肖像画でありながらダリの美学を感じられるもの(「アン・ウッドワードの肖像」)など、まだまだご紹介したい作品だらけなのですが、ぜひ実際に足を運んでダリ・ワールドを体感してほしいので、ここはグッと我慢……!

ミュージアムショップもダリ・ワールドが止まらない!

【芸術の秋】10年ぶりの大回顧展!曖昧で強烈なダリの世界へ
ミュージアムショップは、芸術鑑賞の楽しみのひとつでもあります。ダリ展はグッズが大充実しているので、お買い物の時間も考え余裕をもって訪れてほしいところ。(閉館45分前に駆け込んだことを大後悔したのは私です。)
ノートやポストカードをはじめ、溶ける時計やダリがデザインした香水まで! 実用的なものからおもしろグッズまで揃います。
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こちらはガチャガチャ。私がショップを訪れたときは既に閉館時間で稼働していませんでしたが、300円で1ドル紙幣ならぬ1ダリ紙幣を入手するとガチャガチャができる仕組み。何が出てくるかはお楽しみ!(行った方は後でこっそり教えてください。笑)
【芸術の秋】10年ぶりの大回顧展!曖昧で強烈なダリの世界へ
展示を観終わったら脳が食欲の秋にシフト。チーズに目がない私はこちらもちゃっかりお持ち帰りすることにしました。それにしても、カマンベールチーズを見て「溶ける時計」を思いつくなんて……一体ダリの頭の中はどうなっているのでしょうね。(ぱくぱく)
【芸術の秋】10年ぶりの大回顧展!曖昧で強烈なダリの世界へ
【芸術の秋】10年ぶりの大回顧展!曖昧で強烈なダリの世界へ
開けてみるとこんな感じ。一番食欲をそそらない色を選んでみましたが、思いのほかチーズの味が濃厚で美味しかったです。お酒のおつまみによさそう。

最後には写真撮影のお楽しみも

【芸術の秋】10年ぶりの大回顧展!曖昧で強烈なダリの世界へ
展示を一通り見終わりミュージアムショップを抜けると、その先にはダリ劇場美術館の一室「メイ・ウエストの部屋」を再現したものが。なにやら行列ができているので並んでみると……正面から写真撮影ができるようになっていました。大きなミラーに映しだされる遊び心あふれるダリの世界、一体どのように見えるのでしょうか。こちらもぜひ、実際に行って体験してみてくださいね。

わからないからこそ、ダリなのだ

正直、私はダリの世界がよくわかりませんでした。いや、わからない世界こそが正解なのかもしれません。どんな手法でもお手のもので、どの作品を観ても「ダリらしさ」というものが掴みきれず、掴めそうになるとするりと手から逃げていってしまう。だからこそ、彼は現代でもこれだけ多くの人を魅了し、愛され続けるのかもしれません。
写真を撮ることが好きな私にとって、ダリの世界は自分と真逆のところにありました。写真は目の前にあるもの(現実)を写し出しますが、ダリの描くものはまるで夢の世界のよう。ダリは”見えないものを見る”感性がとても強いのです。写真では到底表現できない世界がそこにはあって、観た人は【ダリ・ワールド】に必ずと言っていいほど惹き込まれてしまう。これぞ、絵画の世界。夢の世界。ダリの世界。皆さんもこの貴重な機会を逃さず、ダリの世界に触れてみてくださいね。

ダリ展
期間:2016年9月14日(水)~12月12日(月)
休館日:火曜日
料金:チケット/1,600円(一般) オーディオガイド/550円
会場:国立新美術館

この記事を書いた人

伊志嶺麻彩

伊志嶺麻彩フリー編集者・ライター

日本大学芸術学部で写真学科を専攻後「旅写真」に魅了され、フリーランスに。気ままに海外を旅しながら、撮ったり書いたりしています。好きなことを通して、世の中とゆるやかに心地よく共存していきたいです。

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