「多摩湖」と「狭山湖」は昔は逆だった!?「トトロの森」からはじまる濃厚なママチャリ旅
日本

ジブリ作品のなかには、自然豊かな土地で、主人公のストーリーが展開されています。例えば、「となりのトトロ」のなかでは、トトロの森が舞台になっていますね。そんな手つかずの自然が、東京都心部から電車で、わずか45分足らずの場所にあることを、知らない人も多いかもしれません。ゆっくりと色づき始めた紅葉の中を、ママチャリでポタリングしながら、ご紹介したいと思います。

トトロの森とは?ジブリアニメ背景の宝庫だった!

●2【多摩湖ポタリング-45】●(700px) P1120349
トトロの森は、空想の世界のもので、実在していないと思っている人も多いかも知れません。実は、東京都と埼玉県の県境に、トトロの森は実在しています。県境には、2つの多摩湖と、狭山湖を囲むように、豊かな自然と里山が多く残る狭山丘陵が広がっています。トトロの森は、狭山丘陵の中にあり、トトロの世界を味わえる素敵なエリアです。

多摩湖と狭山湖は逆だった?ややこしい都市伝説

●3【ふれあい下水道館-3狭山公園】●(700px) P1110507
ポタリングしているなかで、度々出てくる名称なので、改めてご紹介したいと思います。実は1950年頃まで多摩湖と狭山湖は、今とはまったく逆に呼ばれていました。多摩湖も狭山湖も愛称で呼ばれていますが、多摩湖が狭山湖で、狭山湖が多摩湖だったわけです。
●4【ふれあい下水道館-253多摩湖堤頂部】●(700px)拡大OK 
正確には、多摩湖は2つあり、村山上貯水池と村山下貯水池に分かれていて、村山貯水池と言います。狭山湖は、山口貯水池と言います。狭山公園がある村山貯水池が、狭山湖と呼ばれ、多摩川から水を引き入れている山口貯水池が、多摩湖と呼ばれていました。その後、観光地に相応しい名称を付ける運動があり、現在のように変更されて呼ばれるようになりました。

メイちゃんが落ちたと勘違いされた池がある

●5【ふれあい下水道館-1狭山公園ススキ原っぱ】●(700px)拡大OK 
西武多摩湖線の、西武遊園地駅と武蔵大和駅に隣接して、都立狭山公園があります。多摩湖の村山下ダム堤防の下に広がる整備された公園です。堤防の上と下を行き来できる階段もあり、ススキの原っぱや、ゆっくり色づき始めたモミジは、訪れる人を楽しませてくれます。
●6【宅ちゃん池②-6】●(700px) P1090291
公園の一角には、村山貯水池ができる前からある、湖面に様々な色を映し出す宅部池(たっちゃん池)があります。ウッドデッキからの景色は、アマチュアカメラマンが集まる場所です。
●7【多摩湖ポタリング②-11】●(700px) P1130080
「となりのトトロ」のストーリーのなかで、隣のばあちゃんに「メイちゃんが落ちた?」と勘違いされた池です。宮崎駿監督がお住まいの近くにある、「淵の森緑地」なども、モデルになったという諸説もあります。メイちゃんは巻き込まれずに済みましたが、近所の子供たちが夏になると泳ぎに来ていたたっちゃん池には、悲しい出来事がありました。では、多摩湖のミリテリーゾーンへ、ママチャリポタリングの開始です。

整備された12kmのサイクリングロード

●8【多摩湖ポタリング②-36】●(700px)OK P1130105
村山上貯水池と村山下貯水池の周りを1周できるサイクリングロードは、西武園ゆうえんち前からスタートしますが、紅葉狩りやバードウオッチングする人が通り、ポタリングする人に多く出会います。アスファルトの路面は、ところどころヒビ割れているので、注意が必要です。湖畔をまわるといっても、ほとんど湖面を眺められる場所は限られているので、どちらかというと森林浴しているような感じです。

●9【多摩湖ポタリング②-45】●(700px) P1130116
サイクリングロードは、西武園ゆうえんち横から、西武プリンスドームのウラまで、「おとぎ列車」が走っていた軌道を走る西武レオライナーと、並行して走ります。

●10【多摩湖ポタリング②-74】●(700px) P1130146
村山上ダム堤防手前で、サイクリングロードが2又に分かれます。左に進むと、自動車道のある信号を使わずに先へ進むことができます。
●11【多摩湖ポタリング②-84】●(700px) P1130156
自動車が走れる村山上ダム堤防手前は、村山上貯水池と村山下貯水池を遮る堤防です。
●12【多摩湖ポタリング②-82】●(700px) P1130154
堤防の手前から、堤防下に降りることができます。湖を南北に移動するには、自動車の通る堤頂部の幅が狭いため、歩行者や自転車はいったん、堤防下の道路に降りなければなりません。ココで、多摩湖の南側サイクリングロードへルートの変更はしませんが、堤防下へ降りてみます。
●13【多摩湖ポタリング②-90】●(700px) P1130162
堤防下からは遠くに、先ほどまでいた村山下ダム堤防や、西武園ゆうえんちの大観覧車などを望むことができます。

●14【多摩湖ポタリング②-97】●(700px)正常 P1130169

堤頂部の反対側に昇ると、道路の上空をまたぐように渡る、サイクリングロードの橋(たまこ橋)が観えます。村山上ダム堤防から村山下ダム堤防まで、直線でおよそ2km離れています。堤防を降りたり昇ったりしますが、多摩湖ならではの堤防から堤防の眺望は、一見の価値があります。では、たまこ橋まで戻ります。

たまこ橋の周辺にミステリースポット見~つけた!

●1最初+15【多摩湖ポタリング-63】●(700px)拡大② 
村山上ダム堤防の北側にあるサイクリングロードの「たまこ橋」まで戻ると、ちょっと不思議なモノを見つけました。

●16【多摩湖ポタリング②-122】●(700px) P1130195
白壁の建物が観えたので近づいてみると……建物というよりも、昔の地主さんの家にあったような門のようなモノです。
●17【多摩湖ポタリング②-124】●(700px)OK P1130197
多摩湖を造る際、湖に沈んでしまうエリアには、7つの集落があったそうです。161戸の家々と、3つの寺院、3つの神社が、移転を余儀なくされました。そのうちの寺院のひとつ、慶性院は、東大和市芋窪に移転しましたが、山門の慶性門だけが取り残されていたものを、ココに移転したようです。多摩湖を造る際の、歴史の一端を垣間見ることができます。

●18【多摩湖ポタリング②-129】●(700px) P1130202
誰も見向きもしないような、知らなければ訪れることの無さそうな、慶性門横の丘を登ってみると……

●19【多摩湖ポタリング-227】●(700px) P1120534
ダイダラボッチの顔だけの石像があります。ダイダラボッチは、日本各地に伝承される伝説の巨人です。湖沼は足跡とされて琵琶湖を作ったり、山は落とし物とされて富士山を作ったり、多摩湖の周辺にもダイダラボッチの伝説が伝えられています。信じるか信じないかは別として、ジブリ「もののけ姫」のストーリーが思い起こされます。

●20【山口観音②五重塔-52】●(700px) P1060533
ダイダラボッチから少し離れた場所に、山口観音の奥院にあたる、色鮮やかな朱色の五重塔が建っていて、湖周辺で色づいているモミジに負けまいと、輝いているように観えます。
●20【山口観音②龍の階段-88】●(700px)OK P1060569
山口観音の境内には、階段を這いまわる龍だけではなく、いたるところに龍が這いまわっています。龍と言えば、ジブリアニメのなかで、最近気づいたことがあります。
●21【多摩湖ポタリング③山口観音-19】●(700px) P1130239
「ハウルの動く城」で出てくる、王室付き魔法使いマダム・サリマンが居る王宮に、ペンドラゴン夫人(ソフィーの働いていた帽子屋の名前)として、偶然会った荒地の魔女と訪れるシーンがあります。宮殿の中へと最初に通された大きな待合室に、1つだけあったイスに荒地の魔女が座りました。
●21【多摩湖ポタリング③山口観音-65】●(700px) DSC_0388
荒れ地の魔女が座ったイスの下に敷かれたカーペットに、大きな緑色のドラゴンの刺繍がしてありましたが、山口観音にいるドラゴンの配色がそっくりですね。

湖と湖が目の前に迫るエリア

●22【多摩湖ポタリング-90】●(700px) P1120394
狭山湖への三つ又分岐点から振り返れば、山口観音の五重塔が観える場所です。おそらく日本じゅう探しても、大きな湖が3つも並ぶように、ドドーンと横たわっている場所など、そうそうありません。東京都東大和市にある多摩湖(村山上貯水池)の湖面と、埼玉県所沢市にある狭山湖(山口貯水池)の湖面との距離は、わずか100m足らずしか離れていません。周りは湖ですが、もともと山の尾根にいることを、忘れがちになってしまいますね。
●23【多摩湖ポタリング-89】●(700px) P1120393
多摩湖と狭山湖を結ぶ三つ又路を、狭山湖方面に向かってみます。狭山湖まではサイクリングロードが伸びていますが、自動車道路を挟んで反対側に、西武園ゆうえんちから「おとぎ列車」が走っていた時代の名残を観ることができます。
●24【多摩湖ポタリング-88】●(700px) P1120392
土地開発やアミューズメント施設の建設スピードの早かった時代から取り残されたように、駅舎や線路跡と思われる、ポカンと空いた敷地だけが広がっています。グーグルマップでも表示できない場所なので、探してみてはいかがでしょうか?
●25【多摩湖ポタリング-96】●(700px) P1120400
三つ又路に戻り、多摩湖と狭山湖の距離が一番狭い、サイクリングロード沿いに鳥居を見つけました。多摩湖岸に建っているので、「たまこ神社」だと思っていましたが、「玉湖神社(たまのうみ)」と読むそうです。建立した1934年当時の、多摩湖と狭山湖を管理する東京府によって、水神を祀る神社として建てられました。
●26【玉湖神社②-22】●(700px) P1060503
東日本大震災で社殿の柱に亀裂が入り、危険なため社殿は解体されてしまいました。ガランとした境内を観ると、立ち寄る人もほとんどいないように、小さな社だけ残りもの悲しい感じがします。

いよいよ多摩湖のミステリーゾーンに突入

●27【多摩湖ポタリング-95】●(700px) P1120399
サイクリングロードを疾走しているだけでは気がつかないのですが、玉湖神社鳥居の手前に「あかまつばし」という小さな橋があります。玉湖神社鳥居の脇に、けもの道のようなモノがあり、橋の下へ続いているので降りてみると……
●28【多摩湖ポタリング-100】●(700px) P1120404
立ち入り禁止のフェンスで、橋の下へ行くことができません。
●29【多摩湖ポタリング-98】●(700px) P1120402
良く観ると、自動車道路下にトンネルがあることに気づきます。調べてみると、狭山湖の建設工事のために造られたトロッコトンネルだとわかりました。

マニアックなアンテナが反応し始めた!なぜ、3つの湖ができたのか?

●30【多摩湖ポタリング-101】●(700px) P1120405
▲トロッコ軌道あと

徳川幕府が江戸の開発にあたり、水不足解消のために水源確保の湖を計画しました。もともと三多摩地区は、神奈川県に属していましたが、明治のコレラの大流行をキッカケに、東京府に移管されました。水道拡張が急務となった東京府は、いくつかの水源候補地なかから、建設コストの安い狭山丘陵に建設することが決まりました。その結果、埼玉県入間郡勝楽寺村と山口村は、湖の底に沈むことになり、移転を余儀なくされました。
●31【多摩湖ポタリング-102】●(700px) P1120406
▲しばらく歩き続けるトロッコ軌道あと

大正時代になり、最初に取り掛かった多摩湖の建設工事は、人力で行っていたため時間がかかり、狭山湖建設はあとから計画されました。貯水池工事の資材運搬の効率を上げるために、軽便鉄道(東京市軽便鉄道)が、東村山駅から村山上貯水池堤防まで敷設されました。
●32【多摩湖ポタリング-116】●(700px) P1120420
▲トロッコ軌道あとの先にあった立ち入り禁止フェンス

多摩湖の水源は、多摩川の羽村取水堰から、村山上貯水池まで導水路を造り、山口貯水池への分水工事もされました。導水路工事のためトロッコが敷設されて、工事資材運搬をしていました。その後、狭山湖の水源は、羽村取水堰より上流の小作取水堰からも、山口貯水池まで導水路を造りました。トロッコ軌道跡は、サイクリングロードからも観ることができますが、ほとんどが立ち入り禁止になっています。
●33【多摩湖ポタリング-118】●(700px) P1120422
あまり知られていない、貯水池建設の歴史が気になり、多摩湖と狭山湖の間にある、トロッコ電車の軌道を別の方法で追いかけてみることにします。狭山丘陵に向かって、どんなふうに導水路が造られたのか? 知るために、国土地理院マップを見ながら、サイクリングロードから少し外れた場所に向かいます。

「ハウルの動く城」でソフィーが住む街を走る蒸気機関車から想像させる

●34【多摩湖ポタリング-155】●(700px) P1120460
▲横田トンネル

多摩川から水を引き入れた導水路が、狭山丘陵で最初に通るトンネルです。「ハウルの動く城」を観ていた時に、お堀のようになった、地面より低い場所を走っている蒸気機関車に、違和感がありました。なぜ、お堀のような場所を蒸気機関車が走っているんだろう? 例えば、「水の流れるお堀を掘る」「トロッコ軌道が走る」という点を、ミックスして想像を膨らませると、「ハウルの動く城」の中で、ソフィーが住む街の中を走る蒸気機関車の背景に、ダブらせることができる。もしかしたら、同じような感覚で「ハウルの動く城」の背景になったのではないかと思えてしまうのです。
●35【多摩湖ポタリング-159】●(700px) P1120464
▲意外に明るい横田トンネル内

多摩川の水を、多摩湖と狭山湖へ水を送るために堀った導水路のほとんどは、現在では地中に埋められているので、直接見ることができません。導水路とダム建設のための必要な資材を運ぶために、造られたのがトロッコ軌道の「羽村山口軽便鉄道」です。羽村村山線導水路(隧道)の上は、自転車道になっていて、横田トンネルから4つのトンネルを通り抜けることができます。

●36【多摩湖ポタリング-162】●(700px) P1120467
▲赤堀トンネル

「通り抜けられる」と言っておきながら、いきなり2個目のトンネルは電気工事中のために通行止め。迂回して次のトンネルに向かいます。

●37【多摩湖ポタリング-170】●(700px) P1120475
▲住宅地の下にある御岳トンネル

導水路はやがて、村山上貯水池(多摩湖)の手前にある分岐点に至ります。分岐点は水道局管理所で使われている用語で、「ドウドウ」と言う言葉で呼ばれています。

●38【多摩湖ポタリング-176】●(700px) P1120481
▲「番太池」は導水路のスグ横にある

「導水路と導水路水門」をつなげて呼ぶために、「ドウドウ」と略しているようです。
●39【多摩湖ポタリング-180】●(700px) P1120485
▲「ちかん注意」のカンバンのある赤坂トンネル

「ドウドウ」の水門では、山口貯水池(狭山湖)と村山上貯水池(多摩湖)へ送水される分岐点があります。
●40【多摩湖ポタリング-184】●(700px) P1120489
「ちかん注意」のカンバンどおりに薄暗いトンネルは、女性にとって鬼門かもしれません。壁の隙間から、荒地の魔女や魔法使いマダム・サリマンの手下の、「黒いゴム人間」でも出てきそうな雰囲気です。

東京水道と呼ばれる観えないルートの幻トンネル

●41【多摩湖ポタリング-186】●(700px) P1120491
名前の付いた4つのトンネルを抜けると、そこは落ち葉だらけの森の中でした。自転車道は2又路で右にカーブしています。良く観ると、まっすぐな道があります。羽村村山線導水路(隧道)・羽村山口軽便鉄道跡は、国土地理院マップでは「東京水道」という名称で表示されていて、2又路からまっすぐに伸びています。
●42【多摩湖ポタリング-187】●(700px) P1120492
▲幻トンネル発見

どうなっているのか? 気になり、まっすぐ進んでみます。ほとんど人が立ち入らない場所は、落ち葉のたまり場になっているうえに、谷底にある沢のように水たまりになっています。道の中央ほど、シューズのなかに水が入ってきてしまうような場所では、足元を選ぶようにして端っこを進みます。名も無きトンネルは、厳重なフェンスで塞がれていて、遠くからでも侵入を拒むかのような雰囲気を醸し出しています。
●43【多摩湖ポタリング-189】●(700px) P1120494
▲カメラのズームを最大にして観たトンネル出口

勇気を振り絞ってトンネルの中を覗いてみると、かなり遠くに小さな出口が観えます。水道局関係者によると、「ドウドウ」は、恐怖感を感じるほど流れが速く、轟音を立てながら水が流れているような場所のようです。命の保障ができない危険な場所なので、立ち入り禁止になっています。まさに危険エリアに一番近い、幻トンネルと言っても良さそうなトンネルです。
●44【多摩湖ポタリング-245】●(700px) P1120552
幻トンネルを後にして、サイクリングロードを吹き抜ける風が、陽の傾きと共に冷たく感じてきました。マンモス都市・東京の水瓶として、重要な役割を果たし続けている多摩湖にまつわる、建設の裏側にある歴史の一端を垣間見たような気がします。「ドウドウ」は直接観ることができませんが、その姿はグーグルマップで確認することができますよ。

ポタリングの後半は、地下に埋められた観えないルート探しで、マニアック過ぎるテーマになってしまい、「ついて行けない」って思われたかもしれませんね。

ポタリングのルートマップです。

この記事を書いた人

MAKIJI

MAKIJI

秋田生まれ東京育ち。中年デビューのスピリチュアル系フリーライターとして、都市伝説でウワサされる神秘的なエリアをotaku感覚で追いかけます。日本人が忘れかけている魅力的なスポットの隠された謎を一緒に紐解きしませんか?五感をフル活用した情報であなたの背中をそっと後押したいと思います。

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