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滝登りしないと入れない温泉「カムイワッカ湯の滝」がワイルド。服装などのコツも伝授します

カムイワッカ湯の滝

北海道は、知床。世界遺産の地として全国的にも有名な場所だとは承知しております。しかしこの秘境の地に、滝登りしないと入れないというワイルドすぎる温泉があるのをご存知の方は、そう多くはないかもしれません。
その名は「カムイワッカ湯の滝」。
その名のとおり、お湯……つまり、山から湧き出た「温泉」がそのまま大量に流れ出し、滝を形成しているのです。そして、その滝つぼに入浴しちゃおうっていうんですから、人間とはなんと強欲な生物なのでしょうか。
……でも知ってしまったからには、正直入ってみたいです。というわけで、意を決して、知床へ行ってみました。

入浴したければ、滝を登るしか方法がありません

滝つぼに入浴するという時点ですでにワイルド感が満載の「カムイワッカ湯の滝」ですが、入浴するにはもっとワイルドな条件があります。
入浴ポイントに到達したければ、その「カムイワッカ湯の滝」を滝登りするしか方法がないのです。車で横付けしてちゃちゃっと済ませるなんていうことはできません。おまけに、滝つぼまでの道のりに、手すりや階段、ロープなんていうものはひとつもありません。
歩ける場所は、滝の中のみなのです。

私はこの滝登りを決行する前年に、クルーズ船でカムイワッカの滝が海に流れ出す姿を見ておりました。カムイワッカ湯の滝が海に流れ出したこの地点は「カムイワッカの滝」と呼ばれます。
カムイワッカの滝
この滝の硫黄成分のせいで海がエメラルドグリーンとなるとのことで、その色をたしかに写真でも確認できるのではないかと思います。
……という案内をクルーズ船内で受けたわけですが……こんな滝に登ろうっていうのですから、なかなか勇気が要ります。滝登りなんてしたことないし、本気の山登りさえもしたことがありません。大丈夫なのか大変心配になってきました。
ただ、「カムイワッカ湯の滝」自体はここよりももっと山側にあって、船ではなく陸路で向かう場所です。さすがにここまでの「崖」を登るわけではないので、そこはご安心ください。

「カムイワッカ湯の滝」に挑戦できる権利があるか確認する

というわけで、「カムイワッカ湯の滝」はあんまり生半可な気持ちでいける場所ではないということがわかりました。
一応経験者として、先に「カムイワッカ湯の滝」にチャレンジするための条件面を整理させていただきましたので、ご確認ください。

「カムイワッカ湯の滝」への行き方をよく確認する

ここは世界遺産の地ということもあり、日によってアクセスできる方法が変わってきます。
詳しくは「カムイワッカ湯の滝|知床自然センター公式サイト」で確認していただきたいのですが、簡単にまとめますと、

・行ける期間は、6月1日~10月下旬まで
・交通手段の選択肢は、「シャトルバス」「マイカー」「徒歩・自転車」
・「シャトルバス」は8月と、9月のシルバーウィーク期間のみ運行(ウトロ温泉バスターミナルより、大人1,980円)
・「マイカー」は規制があり、上記のシャトルバス期間は通行不可
・「徒歩・自転車」は期間内いつでもOK(ですが、後述しますがきっと相当大変です)

となっております。本当に日によって条件が違う、という意味をわかっていただけたと思うので、よーく確認していただいてからお出かけされることをオススメします。

「マイカー」の場合、車の運転に慣れていないとかなり恐怖を味わうことに

マイカー規制のない時期に知床に行った場合、基本的にみなさんマイカーで来られていると思うので、選択肢として「マイカー」を選ぶ方が多いのではないかとは思います。しかし、ペーパードライバーだけど旅行だからがんばって運転しているというレンタカー利用の方などには、先にお伝えしておいたほうがよい点がございます。
知床五湖から先、「カムイワッカ湯の滝」までの道路は、未舗装区間です。
カムイワッカ湯の滝への道
まだこの程度なら、そこそこゆっくり走れば問題ないと思うかもしれません。しかし。
カムイワッカ湯の滝への道
どんどん道幅が狭くなり、車がすれ違うのがやっとの細さにまでなります。ガードレールもないので、万が一は崖からはるか下に落ちる……ということはなくても、自力で道に復帰するのが不可能になる恐れは十分にあります。
そして、普通にエゾシカやキツネが出ます(見ました)。時にはヒグマも出るそうです。
この道がなんと約10km、20分ほどは続きますので、心して向かっていただけたらと思います。

肌が弱くないか

意外と重要です。なんと「カムイワッカ湯の滝」は強酸性で、源泉はpH1.6-1.8とのこと。
実際、私は肌が弱いわけではないのですが、このときは長く湯に浸かったせいか、皮膚がピリピリとしてきました。なので、肌が弱い方は滝登りを断念せざるを得ない状況になるのではないかと思われますので、ご注意ください。

服装もけっこう大事です

「滝登り」するわけですが、服装にも留意したいところです。

絶対に必要なもの

まずは、マリンシューズ、もしくはそれに類する「運動するのに問題のない、濡れてもいい靴」が必要です。
カムイワッカ湯の滝の服装
私が持参したのはこちらのマリンシューズ。

同じ製品です。足のサイズを気にせず履けると思います。

「カムイワッカ湯の滝」監視員さんのお墨付きをもらえた、滑り止め機能ばっちりなマリンシューズです。「その靴なら上まで登っても全然だいじょうぶだよ」と言われました。しかしながら、監視員さん自体は長靴を履いていましたので、長靴もゴムがしっかりしていればOKかと思われます。もちろんサンダルやクロックスでも可ですが、足元かなり悪いので注意が必要です。
次に、下半身は膝まで確実に濡れるので、短パンかもしくは、まくれる長ズボン
そして、濡れた足をふくためのタオル
上記3点は必須です。

また、もし全身浴したいという場合は水着も持っていきましょう。時期によっては寒いです(後述します)。

準備はできた。あとは登るだけ

ようやく本題に入れます。未舗装道路でエゾシカやキツネにご挨拶しながら車を走らせること約20分……道路の終点に、「カムイワッカ湯の滝」はあります。
まずは看板を眺めて「カムイワッカ湯の滝」について知りましょう。
カムイワッカ湯の滝の看板
▲クリックで拡大できます

消えかかっていて読みにくいのですが、「上流に行くにしたがって温度が高くなる」とのこと。これはがんばって上流に行かねば!
カムイワッカ湯の滝の看板
▲クリックで拡大できます

一番上部には「この先、カムイワッカ湯の滝は、自己責任・自己判断でのご利用が強く求められるエリアです。」との記載。ちょっとビビりはじめました。
カムイワッカ湯の滝の看板
▲クリックで拡大できます

ヒグマに出会ったら。騒がずゆっくり後退、なんてできるかな……様々な不安がよぎってきました。

「カムイワッカ湯の滝」ついに、ご対面

そして看板の裏手側を覗くと……ついに「カムイワッカ湯の滝」が姿を現します。
カムイワッカ湯の滝
え、けっこう水量ある。
土手を登り、滝へのエントリーポイントへ移動。
カムイワッカ湯の滝
かなり豪快なお湯の流れが姿を現しました。まだここは「滝」ではなさそうです。
さっそくエントリーします。
カムイワッカ湯の滝
足元がなんだか、ものすごい水圧です。立っているのも不安になるくらいの温泉が、わたしの足を洗い流してゆきます。もちろん、お湯の流れが比較的ゆるやかな場所もあるのですが、こういう足元の場所も歩かないと、「滝登り」を開始することもできません。
そして気になる水温は、「ぬるい」といったところでしょうか。温水プールくらいの感覚です。
カムイワッカ湯の滝
裸足で登っていく先駆者が目に入ります。滝っぽい地点までは、比較的スムーズに歩けますので、裸足でも大丈夫かもしれません。
カムイワッカ湯の滝
「滝」っぽいところまではまだ距離があるようです。しかしながら、水圧がけっこう強い上、歩ける場所が川の中しかありませんので、川をどんどんと登っていきます。「滝」とはいえないくらいの傾斜ですが、足元が滑りそうという恐怖感が出ます。しかし意外とすべらないのが、強酸性で鍛え抜かれた川底の特徴……なのでしょうか。たぶん実際、コケが生えないから滑らないのだと思われます。
カムイワッカ湯の滝
思っているよりは滑らないでガシガシと地面を足の裏でつかむ感覚で登っていけるのが、自分のワイルドスキルが上がってきたような気がして、だんだん面白くなってきました。
カムイワッカ湯の滝
そうこうしているうちに、ちょっとした滝が出現。3mないくらいの高さでしょうか。登ります。……手すりなんていうものは当然ないので、危険を感じるときは川底を手で掴みながら、ゆっくりゆっくり登ります。下半身の着替えを持ってきていないという事実が、尻もちをついてはならないという緊張感を助長します。
……ようやく頂上に到着!
カムイワッカ湯の滝
「一の滝」の掲示があります。どんな滝かというと……
カムイワッカ湯の滝
……けっこう「滝」です。中腹にいる女性がわりと余裕そうなのが不思議で仕方ありません。ここの滝つぼが、入浴スポットになります。
カムイワッカ湯の滝
少しグリーンがかった色味。深さは大人の膝以上はあると思われますが、底がよく見えなくてわかりません。お湯の温度は……先ほどの温水プール程度の温度よりは少し上がるも、まだ30℃くらいでしょうか。この日は9月末でかなり涼しく、肩まで浸かってみようという意欲は湧きませんでした。しかし真夏の時期は入浴される方もいらっしゃるのが、この「一の滝」の滝つぼです。
そしていよいよ、「一の滝」を登るときが来ました。正直先ほどまでの滝とは段違いに、直角です。両手を使わなければ登れません。
カムイワッカ湯の滝
中腹あたりまで来ました。
カムイワッカ湯の滝
振り返ると、けっこう登ってきたことを自覚して、高所恐怖症を発症しそうになります。
カムイワッカ湯の滝
もう一息!
そして、目の前に現れたのは……。
カムイワッカ湯の滝
今までの滝とレベル感がぜんぜん違うんですが! 紅葉の色づきと湯けむりが相まって、これがいわゆる「絶景」だなと感動してしまいました。たぶん、けっこう本気でここまでがんばって滝登りしたから、絶景にプラス補正もかかっていると思います。いや、でも絶景です。
……しかしここで、皆様に残念なお知らせをお伝えしなくてはなりません。
カムイワッカ湯の滝
実はこの先の「カムイワッカ湯の滝」は、落石の危険が高く、立入禁止となっているのです。うーん、無念! でも落石で怪我でもしたら本気で誰も助けられない場所であることに間違いないので、仕方ありません。
したがって、全身浴で入浴するのであれば「一の滝」の滝つぼがオススメ、ということになります。そして水温の関係で、真夏ではないと厳しいかなというのが現状です。
ただこの「カムイワッカ湯の滝」、足湯としてだけでも、そして「お湯の滝登りにチャレンジできる」というだけでも、なかなかハードで印象深い思い出を残すことができるスポットには違いありません。実際私はかなり心に刻まれまして、いつか立入禁止が解除された日には、さらに上部に登る再チャレンジがしたいものだと思っているところです。

……そして感動と無念さとが入り混じった心境に浸るのも、つかの間。
カムイワッカ湯の滝
帰りがもっと怖いのでご注意を。

カムイワッカ湯の滝
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知床は「自然の本気」を感じられる場所です

いかに普段、先祖たちが開拓してくれた安全な環境で暮らしているか、ということを自覚させられる場所。それが知床です。
原生のままの大自然にお邪魔する感覚。自分たちがここに入っていいのかと、本能から湧き出る恐怖。そういった自分の中の感情に出会える場所だと思っています。
これで実は2年連続知床に行ってしまいました。でも今度は知床半島の反対側・羅臼に行ってみたくなりました。
知床は「自然の本気」を感じられる場所です

▲監視員のおじさんには、滝の中に階段が見えるようで、実はスイスイと下っていった。一番の衝撃シーン

この記事を書いた人

春菜 由香(コロポン)

春菜 由香(コロポン)TRIP'S編集長

87年北海道名寄市生まれ、旭川市育ち。名古屋大学文学部を卒業後、ゲーム業界に就職し、数年で疲れて退職。派遣OLに転身したところ、個人ブログ経由で拾われ現在に至る。