コソボでヨーロッパ最大級の映画祭!? 「DokuFest」の正体とは?
コソボ

野外映画館

去る8月5日~8月13日までの9日間、コソボの古都プリズレンではドキュメンタリー映画祭が開催されました。

その名はDokuFest。

日本ではほとんど取り上げられることのないこの映画祭ですが、一応今年で15周年。ヨーロッパでは3本の指に数えられるドキュメンタリー映画祭です。豪華ゲストやレッドカーペットが存在しないアンダーグラウンドな映画祭として、徐々に注目度を増しています。

今回はそのDokuFest体験レポートをお伝えします。

 

DokuFestの特徴

世界にゴマンとあるドキュメンタリー映画祭。

世界のドキュメンタリー映画祭一覧

その中でDokuFestをDokuFest足らしめているもの、それはこの映画祭の作られ方だと思います。

 

prise

 

DokuFestの始まりは、紛争終了からまだ日も浅い2002年。
プリズレンにある野外映画館Lumbardhiの取り壊し中止を求めて、地元の有志数名が自主的にスタートさせました。

 

IMG_7410

野外映画館
コソボ紛争中の1999年に、閉鎖・解体に追い込まれようとしていた野外映画館。

 
開始当時の予算はたったの5,000ユーロ(約60万円弱)。
上映作品も20作品のみ。
主催者の誰もがドキュメンタリー映画祭未経験の中、手探りで運営を続けてきました。
 
それが現在では200作品以上が上映される立派な映画祭へと大成長。
バルカン半島随一の映画祭として進化した今でも、上映する作品はスタッフ自ら一本一本目を通して選ぶというスタイルを徹底しています。
IMG_8615
そして、150人以上の地元ボランティアスタッフが、チケット販売、物販、会場案内などの役割を担い、影に表に映画祭を支えています。
会期中「Volunteer」と書かれたTシャツを着た若者をたくさん目にしますが、その誰もがこの映画祭に関われることが嬉しくて仕方がない、といった様子です。
 
その雰囲気は「国際映画祭」というよりも、「地元のお祭り」といった感が強く、この時期は大人も子供も朝から晩まで町に繰り出し、どのカフェのテーブルの会話も映画の話題が独占。
文字通りプリズレン全体がDokuFest一色になります。

町じゅうが映画館に!

そんなプリズレンの町ですが、実は映画を見る常設のスクリーンがひとつしかありません。
そこでDokuFestが考えたことは、「A wall is a screen」。
町じゅうで使える場所があればどこでもスクリーンにしてしまおう! ということでした。
そんなわけで映画祭開催中は、町の至る所が映画館に大変身。

 

river cinema
プリズレンを流れるLumbardhi川沿いのスクリーン。

river cinema2
椅子席は2ユーロだが、道路からならタダで見られる。

kalaja
文化財であるプリスレン要塞を活用した、プリズレンの夜景も同時に楽しめるスクリーン。

このようにスクリーンの設置場所はとてもバラエティ豊か。

 

ちなみに私のおすすめは、草原の中に作られた会場。
マットレスに寝そべりながら星空の下映画を観るという、なんとも贅沢な特設映画館です。

 

それもこれも、このユニークな映画祭作りは、「○○がないからできない」ではなく、「ないなら勝手に作ってしまおう」「自分で作ったものを自由に楽しもう」というこの土地の精神の賜物だと思います。

そういうバルカン文化の一例を垣間見るのもまた、ひとつの醍醐味ではないでしょうか。
cinema

 

みんなで作り上げる映画祭

DokuFestの大切なコンセプトは、豪華ゲストやレッドカーペットとは無縁の、誰もが等しく参加できる機会があることだと思います。
opening
コソボを守る多国籍軍KFORのみなさんもお呼ばれ。

opening reception

こちらはオープニングレセプションの様子。
参加するには一応招待状が必要ですが、配られる基準が結構適当なのです。DokuFest関係者の家族・友人・恋人・親族、そのまた友人の友人にまで行きわたるので、ほとんどの場所は誰でも入れます。私でさえも参加できる基準の甘さでした。
 
ticket
DokuFestでは映画の上映の他に、Doku:Techという時間が用意されています。
誰でも入場可能で、各方面から呼ばれたゲストとそれぞれのテーマについて、参加者全員で意見交換を行います。
映画祭は毎年テーマが設けられていて、今年のテーマは「Corruption」(政治腐敗)でした。
あるDoku:Techでは、小学生がアメリカ大使に「アメリカには政治腐敗はあるのですか」と質問したそうです。

 

映画をつくるワークショップもあります。
この期間、映像クリエーターの卵たちはプリズレンの人々を巻き込んで短編映画を製作します。
ここで作られた作品は映画祭の最後に公開されるので、被写体となった地元の人々は、自分の銀幕デビュー姿をひと目見ようと一家総出で駆けつけ、会場は熱気の渦に包まれました。

番外編・DokuNights

DokuFestを語る上で外せないのが、毎晩12時からはじまる音楽イベント・DokuNights。
この映画祭のもうひとつの目玉です。
実は映画よりもこちらのパーティーの方が楽しみ、という人も少なくありません。
 

毎晩違うジャンルの音楽が披露され、出演者のラインナップも独特。
今年はシリア、アルゼンチン、レバノン出身のアーティストや、アルバニア人女性がボーカルのドイツからのバンドがありました。

 

こちらも、コンサートホールがないので屋外バスケットボールコートを会場に使っています。

dokunights2
シリア出身アーティストOmar Souleymanに、観客はノリノリで大喜び。

dokunights
会場は満杯でみんな連日、朝までパーティー三昧。

プリズレン市民の手で15年かけて作られてきた映画祭DokuFest。
規模や完成度で測ると他の映画祭には及ばないかもしれませんが、誰もが参加者になれる懐の深さや既成概念にとらわれない自由さ、そして何よりこんなにも地元の人々に愛されている映画祭としてはピカイチの存在だと思います。

 

そして近い将来、日本とのコラボレーションも視野に入れているとの情報もあり。
これからどんな風に進化を遂げていくのか、機会があればぜひ参加して、その成長を見守りませんか。
closing

DokuFest
開催日:毎年8月上旬
場所:プリズレン(コソボ共和国)
部門:メイン6部門とスペシャルプログラム
チケット:各映画につき2ユーロ
テーマ:Corruption(2016), Migration(2015), Change(2014), Breaking Borders(2013) 基本政治的なメッセージ強し。
毎年国籍を問わずボランティアを募集しているのでボランティアとして参加するという手もあり。
HP:Doku Fest

この記事を書いた人

y s

y sコソボ定点観察人

バルカン半島好きが高じて2015年夏よりコソボを拠点に生活中。でも実際はラブ&ヘイト。過去6年間で中央アジア、ロシア、キューバ、イスラエル、バルト三国などにも訪問。ステイタスは I'm busy with being lazy。 コソボ(とバルカン半島)の魅力の啓蒙!なんて大義名分を掲げた結果、ただの個人趣味全開になったウェブサイト・「ほんとうは楽しいコソボ」をひっそりと展開中。

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