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あれから1年…2016年秋のパリ近況を現地ルポ!「私はテラスにいます」キャンペーンとは?

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パリのテラスはいつも人でいっぱい。雑誌やTV・映画でよく見かける風景ですよね。ところが、昨年11月に無差別テロが起きて、ロックコンサートのあった劇場やその近くの通りに連なるカフェのテラスが無差別テロの標的になってからは、しばらくガランとした日々が続きました。
そんな中、パリのカフェやバー・ビストロの店主たちの発案で、人々が家に引きこもらないで、今まで通りの日常を愉しめるようにと背中を押すキャンペーンが始まりました。それは「Apéro(ちょっと一杯というイメージ)の振舞い酒(主にワイン1杯)をするから、ぜひどうぞ!」というもの。それも、数店舗ではなく、ある夜一斉に多くの店で日時を合わせて開催されました。スローガンは、Metro, Boulot, Apéro! (訳すなら、「メトロに揺られて仕事に行って、それだけじゃもったいない、……ちょっと1杯、を愉しもうよ!」)。
それから、もうすぐ1年。今は、こんな風に笑顔で溢れるテラスが戻ってきている”パリの近況”をご覧ください。

Je suis en terrasse 「私はテラスにいます」キャンペーン

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昨年11月の無差別テロの直後、「Je suis en terrasse 私はテラスにいます」というスローガンをSNSなどで見かけた方も少なくないと思います。一番犠牲者の多かったのはバタクラン劇場でのコンサート客、そして、その近辺のいくつものカフェテラスやビストロやバーの店内も銃撃されました。テラスで寛ぐのはフランス文化の象徴のひとつで、多くの人が好む習慣。だから、とてもショッキングなことでした。それまでの空港や駅や、人の集まるある大きなスペースでの不測の爆発物ではなく、日常空間……例えるなら、公共の広場や公園で起きていただけのことが、自分の家の窓が割られ襲われたような恐怖、です。

でも、それでも屈しないという意思表示のためにあっという間に広まったのが、ハッシュタグ「#JeSuisEnTerrasse」。笑顔でテラスにいるセルフィーを載せる人が続きました。夏のiDTGVの記事最後にも綴らせていただいた通り、手放しで怖くない人なんていなかったはずです。でも、毎日をより楽しく暮らせるよう、素敵なことを見つけて共有し合って、いっぱい笑って、過ごしてきたんです。

Metro, Boulot, Apéro!……仕事帰りにハッピーアワー!

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さて、そんな日常を取り戻す大きなきっかけのひとつにもなったはずの、パリの店主たちの振舞い酒。スローガンにもなったMetro, Boulot, Apéro! というのも、フランス人の心に響くもののひとつ。

というのも、このもとになっているMetro Boulot Dodoというフレーズは、フランスの有名な旧い詩のひとつ。パリジャンたちの生活リズムの悲哀を皮肉交じりに謳ったものなんですが、この韻を踏んだ替え歌ならぬ替えキャッチフレーズが、今までいろんな広告コピーになって親しまれているんです。

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Metro, Boulot, Apéro! はいろんな機会や場所でよく耳にするフレーズのひとつで、ハッピーアワー(フランスでも、夜の始まり数時間は飲料を低価格サービスするのをこう呼びます)を設けているカフェやバーなどでも見かけるもの。

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そう、フランス人たちは一般的に、仕事を終えたら同僚達と付き合い酒はしない、とか、外ではなく家に招き合うものと言われているのは、フランスでも専業主婦が多かったひと時代昔のこと。意外なほど、仕事の後に軽く1杯の習慣はポピュラーなんです。主に男性同士、男女のグループをよく見かけますが、女性同士でも珍しくはありません。「お茶行かない?」の代わりに「1杯どう?」という会話は(私の周りでは)ごくごく普通。むしろ、予め日時を決めてサロン・ド・テに行く時間はないけれど、30分ちょこっと話す時間はふらっと取れる、という感じでしょうか。

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うんと以前は、ハッピーアワーといえばアイリッシュバーやカフェでのビールぐらいが対象で、時間も午後5時から7時ぐらいまでと、ディナーの前の短い時間帯でした。年々、午後9時や10時までと延び、対象ドリンクもアルコール入りもそうでなくても、冷たい飲み物全部という幅広さになってきたのが嬉しい習慣。たとえば、写真(上)のIndiana Clubでは、金曜と土曜以外は毎晩午後5時から午後8時までがハッピーアワー。

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子どものいる家庭やカップルそれぞれが職業を持つ場合には、平日家に招くよりも、外で各々の隙間時間を利用してそれぞれの人間関係を深めるのに便利で効果的。On/Offの切り替え時間の仕事の話とプライヴェートと交えての軽く1杯は、立場と職種によっては、より円滑な人間関係の礎になる効果もあります。

それに、遠距離通勤者の多いのはパリも同じ。世代や性別に係わらず、一旦帰ってから出直したり、訪ね合うには遠すぎる住まい同士でも、メトロに乗る前に軽く1杯。もしくは、通りすがりに知った顔を見つけあって、ほーっとひと息の時間を共有していけるのが、パリのテラスのハッピーアワーの醍醐味。

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暖房器完備なので、寒くなってきても居心地がいいお陰で、季節を選ばないのも魅力のひとつ。贔屓のチームの試合の時間に帰宅が間に合わなくたって、この通り。ひとりで観るより楽しいですし、ね。

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パリに数多くあるプチホテルの近くにも、少し通りを抜けると、たいていこんな風にカフェ・バーがあります。

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お店に入っても入らなくても、賑わうカフェテラスの傍らの舗道を歩くだけでも、弾む空気を楽しめます。日が沈むのがすっかり早くなってしまうのと引き換えに、柔らかい灯りに包まれるのを楽しめる季節。冬時間のパリの夜も、ちょっといいですよ。

Bonjour!とS.V.P.は魔法の言葉

フランスで暮していて1番よく使う単語はBonjour(ボンジュー(ル))こんにちは。
学校や仕事場での挨拶だけでなく、店に入るときも、スーパーマーケットのレジ係にも、バスに乗るとき運転手さんにも、ほぼ1日中、まずこの言葉を口にしてから次の動作が始まると言えるぐらいで、子どもの躾でもキッチリ教える習慣のひとつです。
そして、S.V.P.(シル・ヴ・プレ)お願いします。子ども達が言い忘れると、「魔法の言葉忘れてない? それがないと叶わないよ」

なんでもないようで、大切なコードのひとつ。このひと言がないとどれぐらい奇妙に感じられるかは……日本の玄関で何も言わずに靴のまま上がってくる人、を想像してみてください。
素敵なご滞在を!

この記事を書いた人

ボッティ喜美子

ボッティ喜美子仏日通訳翻訳・ジャーナリスト

フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮らした後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ、家庭優先で仕事しています。英語・スペイン語も少々。