日本最北端の地、遅い春の訪れ「可憐な花に彩られる宗谷岬」
日本

本州が真夏日に見舞われることもあるというこの季節、北海道・稚内の桜はやっと終わったばかり、これからは鮮やかな新緑と一斉に咲き誇る花々が目を楽しませてくれます。一年のうちで最も華やかな観光シーズンの始まりです。
日本最北端の宗谷岬では、雪と氷に覆われた厳しい冬を乗り越えて、出番を待ち望んでいたかのように花が咲きだし、晴々とした雰囲気に包まれます。中でも小さく可愛らしいピンク色の花「アルメリア」は一際目立ちます。
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アルメリアの咲く町

北海道の代表的な花と言えば、ラベンダーやルピナス、そしてエゾカンゾウやハマナスなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。そんな私も、初めて宗谷岬を訪れた時に、アルメリアが綺麗に植えられているのを見て、「んっ??なんでこの花なの?」と素朴に疑問を持ちました。
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▲近くで見ると花が密集しているのが分かります

アルメリアは、草丈が低く、細い葉が地際に密集して茂り、その間から茎がひょろっと長く突き出ているのですが、その先端に幾つもの小さな花が玉の様にまとまって咲きます。主にピンク色と白色の可憐な花です。道内で気に留めたことのない存在でしたが、稚内では頻繁に見かけるため、てっきり、土地の風土にあった自生の花なのかと勝手に解釈していました。
それにしても多くの公園や花壇に植えられているのは何故なのか、気になって調べてみると、実は「アルメリア」は植栽されて広まっていったというのが始まりのようでした。
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▲一見のどかな公園の何の変哲もない光景…海の向こうはサハリンです

実は奥深いストーリー

サハリン沖で大韓航空機撃墜事件が起きた際に、慰霊の意味を込めて花を植えようと地元宗谷漁協女性部の方々が話し合って、アルメリアが選ばれたのだそうです。
一年を通じて気温が低く、強風吹き荒れる場所として有名な宗谷岬。なかなか花を育てるのには条件的に厳しかったはず。
けれど、もともとヨーロッパや北米などの寒い地域が原産で、海浜にも自生しているアルメリアは、砂利が混じった痩せ地でもよく育ち、海沿いの塩分にも負けないということから、最北端の過酷な場所でも耐えられるのではないかと数百株から植えられました。
その後、何十年と平和のための植栽事業を続けてこられた方々の努力の賜物が、現在、稚内を代表するまでの花になっていたとは、知りませんでした。
「アルメリア」という名前は、ケルト語で「海に近い」という意味もあるということです。和名は『はまかんざし』、花言葉は『心づかい・思いやり』というのも何だか素敵に思えます。

一番北の町の一番素敵な季節

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▲『日本最北端の地の碑』の前に植えられたアルメリア
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▲犠牲者の慰霊と世界恒久平和を願うモニュメント『祈りの塔』の前にも

そして丘陵の展望休憩施設の名前も…『ゲストハウス アルメリア』
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今回、写真は載せていませんが、稚内公園でも、一面に植えられたアルメリアの花が楽しめます。
景観美化のためだけの植栽ではなく、色々な人たちの優しい気持ちと祈りが込められたアルメリアの花。
そんなことを思いながら歩いてみると、またひと味違った楽しみ方ができるかもしれません。
宗谷丘陵の壮大な景色を眺められるドライブコースは、春から秋限定で開通。天気の良い日は宗谷黒牛が放牧されているのを見られるかも。soyakuroushi

この開放感あふれるパノラマと、可憐な花に癒される一番素敵な季節に、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

birch

birch

愛知県出身、北海道の道北在住。長年旅行業の世界に身を置き、ツアコン時代には国内・海外へと忙しく飛び回っていた。刺激のあり過ぎる毎日を経て、その反動か今では超のつくほどの田舎暮らし。平和で穏やかな生活に感謝しつつ、家族旅行を楽しみの一つにしている。内に秘めた好奇心の旺盛さは、まだまだ消えていない。

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